【初心者向け】ビジネスにおけるコンセプトとは?
必要性と作成のコツを解説します
「コンセプト」は、ビジネスでもよく耳にする言葉です。
しかし、コンセプトの「細かい意味や必要性」や「作り方」を訊かれると、回答が難しいという方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、ビジネスにおけるコンセプトの基礎的な意味から必要性・作成のコツまで解説します。
コンセプトとは英語の「Concept」のことで、日本語で「概念」「構想」などと訳されます。
特にビジネス場面で使われる際には、お店・企画・広告・商品などをつくる際のベースとなる骨組み・一貫した考え方のことを指します。
コンセプトの使われ方について、飲食店の例を挙げてみましょう。
例:「女性が喜ぶ」をコンセプトに掲げた焼肉店の場合
・女性向けの量・メニューが選べる
・内装が明るくインテリアがオシャレ
・SNS映えする食器が使われている
・排煙設備・におい対策が充実している
・女性用トイレがあり清掃が行き届いている
この場合、例えば「肉の量が多いメニューばかり揃える」ことは、コンセプトに反する経営です。
あくまで「女性が喜ぶ」という根底の考え方から生まれたアイデアで、メニューや設備を検討するべきでしょう。
ビジネスにおいて「コンセプト」と組み合わせて使用される言葉の例
・ブランドコンセプト
ブランドコンセプトとは、そのブランドにどのような価値があるのか、どのような価値を提供してくれるのかを示したものです。
コンセプトの内容は、経営者が届けたい思いや、顧客が求めるものなどによって決定されます。
・コンセプトカー
コンセプトカーとは、自動車メーカーが新しいデザインや機能の方針を表現する際に製造される車のことです。
販売を目的とするのではなく、将来的な技術の発展に重きを置いてコンセプトを決めている場合があります。
・コンセプトカフェ
コンセプトカフェとは、一般的なカフェとは異なり、独自の世界観や特徴的な設定を持つカフェのことです。
特定の客層に強く刺さるような集客をしたい場合に構想されます。「猫カフェ」や「メイドカフェ」などが有名です。
・製品コンセプト
製品コンセプトとは、その製品がどのような利益を提供してくれるのかを示したものです。
ユーザー目線で「この製品を手にしてどう思ったか」「買う利益は何か」「次も使いたいか」などの気持ちを考えながら、会社としての経営方針や経済合理性と照らし合わせて検討していきます。
「テーマ」との違い
コンセプトと似たような言葉に、「テーマ」があります。
この2つの言葉は、日常会話では似たような使われ方をするかもしれませんが、ビジネスにおいては大きな違いがあります。
・コンセプト:「概念」制作・マーケティングなどに使われる
・テーマ :「主題」芸術作品・議論などの主題として使われる
「コンセプト」は、広告の制作やマーケティング戦略において、他社と差別化するための「一貫した考え方」という意味合いが強い言葉です。
例えば「このドリンク広告のコンセプトは青春だ」といった場合、青春は「主題」ではなく、背景にある「伝えたい考え方」と捉えられます。
それに対し「テーマ」は、芸術作品や議論において、そもそもこれが何なのかという「主題」という意味で使われます。
「この議論のテーマは青春だ」といった場合、青春は背景にある「伝えたい考え方」ではなく、「議論でとりあげる主題」を意味します。
具体的なコンセプトの例として、次の3つを紹介します。
・ダイソン「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」
・スターバックス「サードプレイス」
・AKB48「会いに行けるアイドル」
ダイソン「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」
ダイソンの掃除機のコンセプトは「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」で、創業者のジェームズ・ダイソンが従来の紙パック掃除機に対し不満を持ったことがきっかけで誕生しました。
「掃除機を使用していると、紙パックが満杯に近づくほど吸引力が低下する」ことに気づき、その課題を解決しようという思いがコンセプトにつながったのです。
スターバックス「サードプレイス」
スターバックスのコンセプトは「サードプレイス」で、自宅でも職場でもない、第3の場所を意味しています。
単なる「コーヒーが飲めるお店」ではなく「リラックスできる場所」「コミュニティ」という、空間としての意味合いをコンセプトに込め、他のコーヒーショップとの差別化を図りました。
AKB48「会いに行けるアイドル」
AKB48のコンセプトは「会いに行けるアイドル」で、かつて「遠い存在」だったアイドルの固定概念を逆手にとったプロジェクトといえます。
会えないアイドルが主流だからこそ、「会いに行ける」ことで差別化を図り、成功を収めました。
ビジネスにおいてコンセプトが必要とされる理由には、主に次の5つが挙げられます。
・「ビジネスにできるのか」がわかるから
・考えがブレないから
・意思決定のスピードが上がるから
・コンセプトに共感する人の購入につながるから
・ブランディングにつながるから
「ビジネスにできるのか」がわかるから
コンセプトはビジネスの骨組みとなるため、作成しながら「そのビジネスが成り立つか」を再確認できます。
コンセプトを作成する際には、5W1H(いつ・どこで・何を・なぜ・誰に・どのように)を考えながら、人々に伝わりやすい言葉に落とし込みましょう。
例えば、「5年後」「北海道で」「焼肉店を」「新規需要開拓のため」「女性向けに」「SNS映えする」という事業を考えていたとすれば、本当にその地域・客層に需要があるのか、5年後に同じ価値観や流行があるのか、といった将来性の検討ができます。
想定した5W1Hを否定する要素が多ければ、ビジネスとして成立しないと判断される可能性もあるでしょう。
経営者は戦略を練る際に、株主などは支援をする際に「それが本当にビジネスにできるのか」がわかるため、コンセプトが必要とされているのです。
考えがブレないから
コンセプトは「一貫した考え方」であり、事業の軸となります。
例えば「女性が喜ぶ」をコンセプトに掲げた焼肉店の場合、女性向けの料理メニューや内装にこだわるはずです。
そこで男性が喜ぶ要素ばかりを入れてしまうと、当然ブレが生じます。
軸があるとブレずに経営戦略を立てやすく、顧客側も認知しやすいメリットがあります。
意思決定のスピードが上がるから
コンセプトは商品開発やサービスを展開する際、ベースとなる方向性を示してくれます。
つまり、仕事の基本的な指針ともいえます。
指針が曖昧なままでは、事業の関係者が共有する認識もバラバラで、意思決定が遅れる可能性もあるでしょう。
経営者や従業員が統一感を持って、円滑でスピーディーな仕事を進めるためには、コンセプトの共有が求められます。
コンセプトに共感する人の購入につながるから
現代のユーザーは商品を買う際、質や価格だけでなく、共感できるコンセプトかどうかも見ています。
例えば、「売上金の一部を途上国へ寄付」というコンセプトを打ち出した商品や、環境配慮を重要な項目に位置付けた「ESG投資」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
これらは、「人や地球を大切にしたい」という共感によって顧客にアプローチしています。
類似商品が多く並ぶ中で、特定の商品を気に入ってもらうためには、コンセプトの共感も大きな要素になり得るのです。
ブランディングにつながるから
ブランディングにつながるという意味でも、コンセプトは重要です。
例えば、COACH(コーチ)のコンセプトは「手の届くラグジュアリー」です。そう聞くと「身近だけど高級」なイメージが湧いてきませんか?
CMや広告などでブランドコンセプトを告げる例が多いのは、このようなイメージを浸透させるためです。
キャッチーなコンセプトを打ち出し多くの人に認知されれば、そのブランドを選ぶ顧客も増えるでしょう。
魅力的なコンセプトは、ユーザーの脳内にブランドイメージとして浸透していきます。
ここからは、以下の流れでコンセプトの作り方について解説します。
・STEP1:市場調査
・STEP2:ターゲット選定
・STEP3:ターゲットが抱える不満・問題を分析
・STEP4:ターゲットが抱える不満・問題を解決する方法を検討
・STEP5:抽象的なキーワードを組み合わせコンセプト作成
STEP1
市場調査
新しいコンセプトのビジネスを始めようと思った際には、まずは市場調査から始めます。
どのような商品・サービスが売れているのかを把握し、流行や将来性のある分野は何なのかを見極めましょう。
また、最初から独自のビジネスアイデアを閃いたと思っていても、既に市場が似たようなビジネスで埋め尽くされていたり、過去に失敗して終わっていたりするかもしれません。
どのような立場でも市場調査は必要不可欠です。
STEP2
ターゲット選定
市場がある程度把握できたら、ターゲットを選定します。
ターゲットが明確になっていないと、商品開発時に軸がなく構想が練りにくくなり、ユーザー側も自分ごととして商品を見られないというデメリットが生じます。
ターゲットを絞って選定し、コンセプトを具体的に考えやすくしておきましょう。
STEP3
ターゲットが抱える不満・問題を分析
ターゲットの抱える不満・問題を知ることが、独自コンセプトの立案につながります。
競合他社の提供している既存商品を分析し、ターゲットが不満を述べていたり問題を感じていたりするようなら、それがニーズです。
ダイソンの「吸引力の変わらない」のように、不満から派生する言葉があれば、ターゲットに刺さりやすいコンセプトになり得ます。
STEP4
ターゲットが抱える不満・問題を解決する方法を検討
ターゲットが抱える不満・問題を分析できたら、その解決方法を検討しましょう。
例えば、「重くて疲れる」「この機能がほしい」「時間がかかる」などの課題があったとすれば、「軽量化する」「機能を増やす」「短縮化・効率化する」などの対策が考えられます。
ターゲットの観察・分析がより深くできているほど、細かい不満の抽出や潜在的な課題の発見がしやすく、クリティカルな解決方法も発想しやすくなります。
STEP5
抽象的なキーワードを組み合わせコンセプト作成
ターゲットが抱える不満は多岐に渡ります。
一方でコンセプトは、全体の骨組みとなるような一貫性のある短い言葉です。
そこで、無数の不満や解決策から、それぞれ抽象的なキーワードを抽出したものを組み合わせてコンセプトを作成します。
良いコンセプトの作成にあたっては、言葉選びも非常に重要です。
ターゲットに刺さりやすい単語を使い、新しい価値観を示すキーワードを含められれば、より良いコンセプトになるでしょう。
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コンセプトを魅力的にする5つのポイントを紹介します。
・ターゲット情報は細かく設定する
・バリュープロポジションを考える
・競合をしっかりリサーチする
・多角的な視点で考える
・明確なゴールを決める
ターゲット情報は細かく設定する
ターゲットの情報は、年齢・性別・家族構成・居住地・職業・価値観・行動範囲など、できるだけ細かく設定します。
マーケティング業界では、上記のようにできるだけ細かく設定した人物像を「ペルソナ」と呼びます。
「ターゲットをより細かく設定したものがペルソナ」だと考えておくとよいでしょう。
例えば、「30代・女性・夫と子どもの3人暮らし・営業職・高くてもコンビニをよく使う・自動車利用や対面仕事が多い」などです。
ペルソナの設定が曖昧だと、結局「誰に対しても価値のないもの」として終わる可能性があります。
商品というモノさえ届けば良いのではなく、顧客が商品から得られる利益や体験といった「価値を届ける」という意識を持ってターゲットを見ることが重要です。
バリュープロポジションを考える
バリュープロポジションとは、「ニーズが大きく、競合他社にはない独自の価値」のことを指します。
iPhoneを例に挙げると、電話やインターネットなどの機能を融合させただけでなく、洗練された美しいデザインや直感的なUXにこだわり抜いたという点が、優れたバリュープロボジションといえるでしょう。
競合をしっかりリサーチする
コンセプトが競合と被らないためには、綿密なリサーチが大切です。
コンセプトが他社と被ってしまうと、差別化が図れず市場で埋もれてしまうだけでなく、「真似をした」というマイナスのレッテルを貼られる可能性もあります。
市場で勝ち抜くために、そしてリスク回避のために、徹底的にリサーチしておきましょう。
多角的な視点で考える
コンセプトを言語化する際には、多角的な視点で考える必要があります。
例えばiPhoneであれば、以下のような視点で捉えられます。
・電話・コミュニケーションツール
・映像・音楽を楽しむ
・日常的に持ち歩き使用する
・決済手段に用いる
ここから抽象度を上げて、どのようなコンセプトであればユーザーに届きやすいかを検討をします。
個別の具体的な事象を挙げながらも縛られず、様々な角度から本質を見出すことで、抽象化したコンセプトに落とし込むのです。
明確なゴールを決める
コンセプトの作成には、「明確なゴールを決めておく」ことも大切です。
ゴールとは、「最終的にターゲットにどう行動してほしいのか」という、コンセプトに対する結果のことです。
これが明確でなければ、現実味に欠けた内容になってしまう可能性があります。
商品コンセプトの成功事例を、弊社アイデアプラス事例も交えて3つ紹介します。
・アイデアプラス事例
・フリクションボールペン
・バーミキュラ
アイデアプラス
アスリート向けに弁当などの食事提供をしていたiLimA(イリマ)様。
今後は仕事で忙しいママや、社会人の方々にも向けてサービスを展開していきたいとのことで
コンセプト設計からECサイトの制作にいたるまでをサポートさせていただきました。
まずは、将来の理想像をヒアリングしながら「iLimAらしさ」を追求することに注力しました。
iLimA様の理想像は、頑張っているママやサラリーマン、アスリートたちに食事を通して「元気を届けたい」。
子供が小さくて買い物すらゆっくり行けないママのニーズは「手作りの美味しい食事を家族に食べさせてあげたい」。
忙しい社会人やアスリートのニーズは「栄養のある健康的な食生活をしたい」「身体作りに必要なたんぱく質やボリュームのある食事を手軽にしたい」。
このようなターゲットのニーズを叶えることで、「元気を届ける存在」になりたい
という想いから生まれたのが「頑張る誰かを支えるみんなの元気印」というコンセプトです。
このようにコンセプト設計をすることによって、目指すべき理想の姿は何なのか、実際のニーズはどこにあるのか、何をターゲットに届けたいのかを明確に認識することができます。
このコンセプト設計を通じて、ロゴやECサイトなどブランディングに関わる全ての制作物もサポートさせていただきました。
正しいコンセプト設計は一貫性のあるブランディングを届けるためにも重要です。
iLimAのサイトはこちら
フリクションボールペン
フリクションボールペンは「書いて、消して、また書ける」をコンセプトに、大ヒットしました。
従来は消えないインクが当たり前だったボールペンに対し、摩擦によって消えるインクを開発し「消せるボールペン」を商品化したのです。
ボールペンは消せないという常識を覆しながら、ユーザーが潜在的に感じていた課題を解決しました。
バーミキュラ
バーミキュラは、メイドインジャパンの鋳物ホーロー鍋です。
「暮らしをかえる鍋」をコンセプトに、鋳造技術と精密加工技術を活かした商品で成功しました。
より美味しく調理できないかという課題に対し「無水調理可能な精密鋳物ホーロー鍋」を開発し、ユーザーに新しい幸福体験を提供した好事例です。
ここから、コンセプトについてよくある質問に回答していきます。
・コンセプトとは、簡単にどういう意味か?
・コンセプトとテーマの違いは何か?
・コンセプトの例は?
コンセプトとは、簡単にどういう意味か?
コンセプトとは、「概念」「構想」などと訳されます。
特にビジネス場面で使われる際には、お店・企画・広告・商品などをつくる際の「ベースとなる骨組み・一貫した考え方」のことを指します。
コンセプトとテーマの違いは何か?
コンセプトの意味は「概念」、テーマの意味は「主題」で、使用されるシーンが異なります。
コンセプトは制作・マーケティングなどに使われ、テーマは芸術作品・議論などの主題という意味で使われます。
コンセプトの例は?
ダイソンの掃除機のコンセプトは「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」です。
創業者のジェームズ・ダイソンが従来の「使用していると吸引量が落ちる掃除機」に対し不満を持ったことがきっかけで誕生しました。
今回はコンセプトの意味や必要性・作成のコツについて解説しました。
コンセプトは「一貫した考え方」を意味し、ビジネスをするうえで欠かせない存在です。
成功事例にはどれも魅力的なコンセプトが設定されていました。
コンセプトを作ると事業に軸が生まれ、ビジネスの善し悪しの見極めが可能になり、よりスピーディな発展につながります。
弊社、株式会社アイデアプラスはお客様が抱える課題を一緒に考え、クリエイティブの力で課題解決・目標達成に向けて伴走いたします。
コンセプト作成にお困りの際は、ぜひ株式会社アイデアプラスにお気軽にご相談ください。
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花澤 桃子
ディレクター
千葉県出身。専門学校卒業後に都内ホテルにてウエディングプランナーとして従事した後、
スクールにてWEBデザインを上流工程から学ぶ。その後、ディレクターとしてアイデアプラスに入社。
現在はWEBサイトやチラシ、パンフレットなどの販促物を中心にディレクションを担当。