カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを利用・体験する一連のプロセスを、顧客の視点から可視化したものです。顧客のニーズや課題を深く理解し、より効果的なマーケティングやカスタマーサービスにつなげる為に詳細な解説と作り方についてご紹介します。
カスタマージャーニーは、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの一連のプロセスを「顧客の旅」として可視化した概念です。顧客の行動・思考・感情を理解し、より良い顧客体験を提供するために活用されます。 カスタマージャーニーマップは、このプロセスでの顧客の行動や感情を時系列に並べて図示したフレームワークで、マーケティング施策の立案や改善に役立てられます。 顧客体験向上や施策の効果最大化を目指す際に重要なツールとなっています。
ここではカスタマージャーニーマップの必要性について、詳しく解説します。
売上を上げるため
カスタマージャーニーマップは、顧客の行動や感情を理解し、それに合わせた戦略を立てるための貴重な情報源です。このマップを作成することで、顧客がどのように製品やサービスを見つけ、購入し、利用するのかが明確になります。これにより、企業はより効果的なマーケティング戦略を展開し、顧客のニーズに合った製品やサービスを提供できるようになります。結果として、売上の増加が期待できます。
顧客との接点を増やすため
カスタマージャーニーマップは、顧客がビジネスとの接点を持つ機会を特定し、最適化するのに役立ちます。この接点を最良の状態にすることで、顧客が継続的にビジネスとの関係を築く可能性が高まります。また、ジャーニーマップを通じて、顧客がどの段階で何を求めているのかを把握し、それに合わせて適切なコミュニケーションや提供を行うことができます。これにより、顧客の忠誠度が向上し、継続的な購入や顧客の生涯価値の向上が期待できます。
顧客目線でサービス改善を図るため
カスタマージャーニーマップは、顧客の視点からサービスや製品の改善点を洗い出すのに役立ちます。顧客がどの段階で問題を抱えているか、どのような期待を持っているかを理解し、その情報をもとに製品やサービスの品質向上やプロセスの最適化を行うことができます。これにより、顧客満足度が向上し、競争力を強化することができます。また、顧客からの貴重なフィードバックを取り入れることで、顧客にとってより価値ある提供が可能となります。
それではここからカスタマージャーニーマップ作成の手順を追っていきましょう。
ペルソナを設定する
フレームワークを決める
情報収集する
情報をマップに落とし込む
ペルソナを設定する
ペルソナとは、自社製品やサービスのターゲットとなる人物像を具体的に設定したものです。ペルソナを設定することで、顧客をより具体的にイメージし、カスタマージャーニーマップを作成することができます。
ペルソナを設定する際には、以下の項目をできるだけ細かく設定することが重要です。
・年齢
・性別
・職業
・家族構成
・年収
・趣味
・価値観
・課題や悩み
これらの項目を具体的に設定することで、顧客の行動や思考をより深く理解することができます。
たとえば、ペルソナの年齢を20代と設定した場合、そのペルソナはSNSをよく利用する・トレンドに敏感・経済的に余裕がないなどといった特徴を考えられるでしょう。
ペルソナは、1つに絞るのではなく、3〜5種類程度作成すると、より幅広い顧客のニーズを把握しやすくなります。
たとえば、自社製品やサービスが若者向けとシニア向けの両方をターゲットとしている場合、それぞれにペルソナを設定することでより効果的なマーケティング施策を打つことができます。
フレームワークを決める
カスタマージャーニーマップは、横軸に顧客の行動や思考のフェーズ、縦軸には態度変容の流れや顧客との接点やタッチポイントを配置するのが一般的です。
横軸のフェーズは、以下のようなものが挙げられます。
認知
興味・関心
検討
商談
購入・推奨
縦軸の態度変容の流れや顧客との接点は、例えばBtoBであれば以下のようなものが挙げられます。
顧客の行動
企業の目的
タッチポイント
コンテンツ例
CTA
これらのフェーズやタッチポイントは、自社製品やサービスの特性に合わせて、カスタマイズすることもできます。
たとえばBtoBの製品やサービスの場合、認知のフェーズでは、展示会やセミナーなどのイベントをタッチポイントとして設定するとよいでしょう。
情報収集する
次に情報収集を行います。情報収集の方法は、以下のようなものが挙げられます。
アンケート
ソーシャルメディアの分析
ヒアリング
定性調査
情報収集を行う際には、主観で想像するのではなくできるだけ客観的なデータをもとに行うことが重要です。
たとえば、アンケートを行う際には、顧客の行動や思考を具体的に質問するようにしましょう。また、ソーシャルメディアの分析を行う際には、顧客の投稿やコメントを分析することで、顧客のニーズや課題を把握することができます。
情報をマップに落とし込む
情報収集が完了したら、最後に情報をマップに落とし込みます。フレームワークに情報や仮説を落とし込む際には、以下の点に注意しましょう。
顧客の行動や思考を時系列で整理する
顧客が抱える課題や悩みを把握する
顧客が期待する体験を明確にする
カスタマージャーニーマップは、作成しただけでは意味がありません。作成したマップをもとに、具体的なマーケティング施策やサービス改善策を実行することで、顧客満足度の向上や売上アップにつなげることができます。
ここではカスタマージャーニーマップ作成のコツを6つご紹介します。
1. KPIを設定する
2. 顧客目線に立つ
3. 徹底的に情報収集する
4. 複数人で考える
5. 細かく作り込みすぎない
6. 定期的にアップデートする
1. KPIを設定する
カスタマージャーニーマップを作成する際には、まず何を達成したいのか、どのようなゴールを置くのかを明確にする必要があります。KPIを設定しておくことで、カスタマージャーニーマップの作成や改善の方向性が定まり、効果的な施策を打つことができます。
KPIの例としては、以下のようなものが挙げられます。
顧客満足度の向上
LTV(顧客生涯価値)の向上
顧客離脱率の低下
新規顧客の獲得
2. 顧客目線に立つ
カスタマージャーニーマップは、「こう動いてほしい」という願望ではなく、顧客の視点に立って作成することが重要です。顧客がどのような課題や悩みを抱え、どのような体験を期待しているのかを理解することで、より効果的な施策を打つことができます。
顧客目線に立つためには、以下の方法が有効です。
顧客インタビューやアンケート調査などを行い、顧客の声を直接聞く
顧客の行動や思考を観察する
顧客の立場に立って、自社の商品やサービスを体験してみる
3. 徹底的に情報収集する
カスタマージャーニーマップを作成するためには、顧客に関する幅広い情報を収集する必要があります。顧客の行動や思考、感情、タッチポイントなど、あらゆる角度から情報を収集することで、より精度の高いカスタマージャーニーマップを作成することができます。
情報収集の方法としては、以下のようなものが挙げられます。
顧客インタビューやアンケート調査
顧客の行動ログやWebサイトのアクセス解析
顧客のSNSやブログの投稿
顧客の口コミやレビュー
4. 複数人で考える
一人で作成する場合、自分の経験や知識が偏っていると顧客の行動や思考が偏ったカスタマージャーニーマップになってしまう可能性があります。また、自分の担当領域の視点が狭いと顧客の体験全体を捉えきれず、効果的な施策が打てなくなる可能性があります。
カスタマージャーニーマップを効果的に活用するためには、複数人で協力して作成することが重要です。
ただ、複数人であってもマーケティング部門だけでカスタマージャーニーマップを作成すると普段から担当しているWebサイトや広告などの一部のプロセスだけに視点が向いてしまいう事があります。そのため、顧客の体験全体を捉えきれず、偏ったマップになってしまう可能性があります。
カスタマージャーニーマップを効果的に活用するためには、マーケティング部門以外の部門も巻き込み、複数人で協力して作成することが重要です。異なる視点や意見を取り入れることで、顧客の体験全体を捉え、より効果的な施策を打つことができるようになります。
5. 細かく作り込みすぎない
カスタマージャーニーマップを作成する際には、細かく作り込みすぎないことが重要です。具体的にしすぎると、運用しづらくなるからです。
たとえば、ペルソナの設定をあまりにも細かくしてしまうと、そのペルソナに当てはまる顧客が非常に少なくなってしまい、マップの信頼性が低下する可能性があります。また、タッチポイントを過度に絞り込んでしまうと、顧客の行動や思考をすべて網羅できなくなってしまう可能性があります。
カスタマージャーニーマップは、あくまでも顧客理解の手段です。そのため、過度に作り込みすぎずある程度の幅を持たせて作成することが重要です。
6. 定期的にアップデートする
カスタマージャーニーマップを効果的に活用するためには、定期的にアップデートすることが重要です。なぜなら、顧客のニーズや行動は常に変化するため、カスタマージャーニーマップもそれに応じて変化させていく必要があるからです。
ここでは実際のカスタマージャーニーマップの例をご紹介します。
オンライン英会話申し込みまでのカスタマージャーニーマップ
BtoBのリード獲得に強みを持つ会社のツールの契約までのカスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップについてよくある質問をまとめました。
カスタマージャーニーマップはなぜ作成する必要があるのか?
カスタマージャーニーマップを作成する理由は以下の通りです。
売上を上げるため:顧客の行動や感情を理解し、適切なマーケティング戦略を展開するため
顧客との接点を増やすため:顧客がビジネスとの関係を築くための機会を特定するため
顧客目線でサービス改善を図るため:顧客の視点からサービスや製品の改善点を洗い出すため
カスタマージャーニーマップとユーザーストーリーマップの違いは何か?
ユーザーストーリーマップとは、ユーザーが商品やサービスを使用する際の行動や目的を、ストーリー形式で整理したものです。ユーザーのニーズや価値を理解し、それに基づいて開発を進めるためのツールとして活用されています。
ユーザーストーリーマップとカスタマージャーニーマップは、どちらもユーザー中心の開発やサービス改善に有用なツールですが、その目的と活用シーンが異なります。
ユーザーストーリーマップは、ユーザーのニーズや価値を深く理解し、それに基づいて開発を進めるためのツールです。
そのため、新規開発やサービス改善の初期段階で活用されることが多く、ユーザーの視点から商品やサービスを設計する際に役立ちます。
カスタマージャーニーマップは、ユーザーの行動や思考、感情を理解し、問題点を発見するためのツールです。
そのため、マーケティングや改善の際に活用されることが多く、ユーザーの体験を分析して、より良い商品やサービスを提供するために役立ちます。
カスタマージャーニーマップは、顧客体験を向上させるための重要なツールです。カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の行動や思考、感情を深く理解し、顧客満足度の向上につなげることができます。
カスタマージャーニーマップを作成する際には、以下のポイントを押さえましょう。
具体的なペルソナを設定すること
複数の視点から検討すること
定期的に更新すること
カスタマージャーニーマップを活用して、顧客体験を向上させていきましょう。
弊社、株式会社アイデアプラスはお客様が抱える課題を考えクリエイティブの力で課題解決、一緒に目標達成まで伴走致します。
「カスタマージャーニーマップを作成したいけれどやり方が分からない」「作成したもののどう活用すればいいか分からない」などお困りの方は、ぜひ株式会社アイデアプラスにお気軽にご相談ください。
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長谷川 歩楽
ファシリテーター
愛知県出身。工業系の大学院時代に学生起業として組織を設立。地元の中小企業から大手企業まで様々な規模/業種の企業の中で新事業開発や商品開発のファシリテーションを担当。
その後、アイデアプラスでも産官学連携の共同研究の場や製造/飲食業界などでのファシリテーションを行う。