デザイン思考とは?
必要性や5つのプロセスを丁寧に解説
デザイン思考とは、ユーザーのニーズや課題を深く理解し、解決するための思考法です。
5つのプロセスに沿って検証し、改善を繰り返していくことで、ユーザーが満足できる商品やサービス作りにつながります。
しかし、デザイン思考とはどのようなものか、なぜ必要なのかなど、具体的にわからない方もいるのでしょう。
今回は、デザイン思考の必要性と、5つのプロセスについて詳しく解説します。
デザイン思考を学び、自社のビジネスに役立てましょう。
デザイン思考とは、ユーザーのニーズをもとに創造的なアイデアを生み出し、効果検証しながら課題解決に取り組む思考法です。
ビジネスや社会の問題解決に役立つ手法として、日本では2010年代後半から注目され始め、2017年に策定された「デジタル・ガバメント推進方針」以降は、行政サービス改革の基本思想としてデザイン思考を位置づけています。
デザイン思考は、デザイナーがデザインする過程で用いるプロセスですが、他の職種でもこれを取り入れることで、ユーザー目線で課題の抽出・解決を目指せます。
また、短い期間で実行と改善を繰り返す「人間中心設計」が特徴です。
デザイン思考を導入する企業も増えており、今後ますます重要視されていくことが予想されています。
アート思考との違い
アート思考とは、固定概念を取り除き、自分の感情から新たなニーズや課題を掘り下げていく思考法です。
アーティストの創作活動のプロセスと似ています。
デザイン思考とアート思考の違いは、主に対象と目的です。
デザイン思考がユーザーのために何かを作る「客観的視点」であるのに対し、アート思考は自分のために何かを作る「主観的視点」といえます。
また、デザイン思考は問題解決やイノベーションに重点を置きますが、アート思考は感性や表現に重点を置くのも異なる点です。
デザイン思考が重要視されている背景として、市場構造と社会構造の変化が挙げられます。
商品やサービスを開発する際、これまでは仮説検証型が主なアプローチでした。
しかし、変化の激しいVUCA(※1)時代において、仮説検証型は通用しなくなっています。
また、急速な技術革新によって社会構造が大きく変化したため、イノベーションを導きやすいデザイン思考が注目されています。
(※1)「VUCA」とは 環境が目まぐるしく変化し、予測困難な状態であることを意味する造語です。 「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取っています。 |
デザイン思考を実践するためには、以下の5つのプロセスがあります。
・共感(Empathize)
・問題定義(Define)
・創造・着想(Ideate)
・試作(Prototype)
・テスト(Test)
共感(Empathize)
デザイン思考の軸は、ユーザー目線で考えることです。
ユーザーのニーズや課題を探るために、まずはユーザーをよく観察し理解していきましょう。
具体的には、インタビュー・アンケート調査・モニタリングなどを通して、ユーザーがどのようなことに共感しているのかを見つけていきます。
ただし、ユーザーの意見を鵜呑みにしないように注意が必要です。
ユーザーの本音を探り、同じ視点で物事を捉えましょう。
問題定義(Define)
ユーザーへの共感で得た内容をヒントに、ユーザーのニーズを定義していきます。
どのようなことを実現したいのか、潜在的な課題やニーズは何かを掘り下げていきましょう。
このとき、ユーザーを取り巻く環境はもちろん、時代背景も踏まえることが大切です。
ユーザーが言語化している内容だけでなく、その背景にある思いもしっかり分析しましょう。
創造・着想(Ideate)
課題が明確になったら、解決のために具体的にアイデアや意見を出していきます。
フレームワークやブレインストーミングを活用し、あらゆる角度から話し合いましょう。
このプロセスでは、質よりも量を意識してどんどん意見を出すことが重要です。
できる限り自由な発想でアウトプットするようにしましょう。
試作(Prototype)
アイデアが固まったら、次にそれらを検証するために商品やサービスの試作品を作りましょう。
実際に作業すると、強みや弱みが明確になります。
ここで重要なのは、なるべく時間やコストをかけずに、まず形にしてみることです。完璧な状態でなくても、可視化により改善点や問題点の発見につながります。
もし試作の段階でうまくいかなければ、もう一度アイデアを出すところから始めましょう。
テスト(Test)
試作品ができたら、ユーザーテストを行って実際にユーザーに使ってもらいます。
ユーザーのニーズや課題が解決できるか、不足している部分はないか、新たな課題はないかといったことを確認しましょう。
テスト後は必ず検証し、改善を繰り返していくことが大切です。
ユーザーが満足できる商品やサービスを作るために、この5つのプロセスを実践していきましょう。
デザイン思考を実践することで、以下のようなメリットが期待できます。
・アイデアの提案が習慣化される
・多様性が身につく
・論理性のある提案が生まれる
アイデアの提案が習慣化される
5つのプロセスで述べたように、デザイン思考では質より量を意識して意見を出していきます。
「まずやってみる」「とりあえず作ってみる」という姿勢が重要であるため、間違いを恐れずにアイデアを提案しやすくなり、習慣化につながるでしょう。
デザイン思考が定着していると、アイデアを提案するハードルが低くなるため、活発に意見が出し合えるようになります。
多様性が身につく
デザイン思考では、さまざまな意見を受け入れる姿勢が求められるため、多様性が身につきます。
メンバーの視点や価値観などは人それぞれであり、プロセスの過程であらゆる意見に触れる機会が出てきます。
多彩なアイデアや意見が飛び交うことによって、思考の幅が広がるでしょう。
また、自由に意見交換し、多様な意見が受け入れられるようになると、メンバー間の信頼が構築されていきます。
メンバーの結びつきが強くなり、結果として組織の強化にもつながっていくでしょう。
論理性のある提案が生まれる
デザイン思考では、アイデアにたどり着くまでのプロセスが可視化されているため、論理性のある提案が生まれやすくなります。
デザイン思考の特徴は、情報を可視化して共有できることです。
情報を整理しながら創造的なアイデアを考えられるため、論理性のある提案につながりやすくなるでしょう。
デザイン思考を実践する際には、以下の4つに注意が必要です。
・何もないところから開発するのには向かない
・メンバーの理解を得るのに時間がかかることがある
・組織に浸透させるのが難しいことがある
・メンバーの個性やスキルに左右される
デザイン思考は、ユーザーのニーズや課題をもとに進めていくため、ゼロからの開発には向いていません。
また、デザイン思考はデザイナーのための思考と捉えられることがあり、メンバーの理解や組織への浸透が難しいことがあります。
さらに、プロセスのなかで生まれるアイデアや意見は、メンバーの個性やスキルに左右されます。
メンバーによってはありきたりなアウトプットになることも考えられるでしょう。
デザイン思考を実践するには、デザイン思考とは何か、どのようなメリットがあるのかを共有することが大切です。
じっくりとメンバーや組織に浸透していけるように働きかけていきましょう。
デザイン思考を実践するときに、ぜひ活用すべきフレームワークがあります。
ここでは、デザイン思考と相性のいい2つのフレームワークを紹介します。
SWOT分析
SWOT分析とは、内部要因と外部要因からビジネスモデルを精査するフレームワークです。
以下の4つの軸で自社の現状を把握していきます。SWOT分析1.強み(Strength)2.弱み(Weakness)3.機会(Opportunity)4.脅威(Threat)SWOT分析は、アウトプットの精度が高いのが特徴です。
ビジネスモデルキャンパス
ビジネスモデルキャンパスは、ビジネスモデルを分析するフレームワークです。
以下の9つの要素があります。
ビジネスモデルキャンパスの9要素
1.顧客セグメント
2.顧客との関係
3.チャネル
4.提供価値
5.キーアクティビティ
6.キーリソース
7.キーパートナー
8.コスト構造
9.収益の流れ
これらは、新たなアイデアを出すときのヒントとなります。
デザイン思考は、さまざまな企業が取り入れています。
ここでは、デザイン思考の成功事例を紹介します。
株式会社アイデアプラス
弊社アイデアプラスでは、社員教育の一環としてデザイン思考に基づいたワークショップを実施しています。社員ひとりひとりの創造性と柔軟性を養い、日常業務において新たな視点から問題に取り組む能力を身につけることを目的としています。
また、デザイン思考をベースの考え方として持つことで、「プロセス」を重視しながらプロジェクトを遂行していく能力の向上にも繋がると考えています。
こういった取り組みを通して、社員間での最適なソリューションを目指した情報共有やアイデアの交換が活発化し、組織全体のプロジェクト推進力が高まりました。
参考として、実際のワークショップで使用している資料の一部をご紹介いたします。
このような思考プロセスを習慣付けることで、自然と顧客志向が強化され、より的確な課題を定義した上でのアイデア創出が可能になります。
デザイン思考を社員教育に導入したことで組織文化にポジティブな変化が生まれ、多種多様なクライアント企業の課題解決に貢献しています。
パナソニック株式会社
パナソニック株式会社では、デザイン思考を採用活動に取り入れています。
従来のプロダクト型からデザイン思考型の発想に切り替えることで、「いかに求職者の共感を得られるか」という視点で採用活動を行っています。
1on1やグループインタビューを実施し、求職者の思いや背景などを理解するとともに、自社のスタンスや価値観を伝え続けたところ、働き方やキャリアへのエンゲージメントが向上しました。
ここからは、デザイン思考に関するよくある質問に回答します。
・デザイン思考で大切なことは?
・デザイン思考の強みは?
・デザイン思考はいつ使うべき?
デザイン思考で大切なことは?
デザイン思考で大切なのは、実現性にとらわれずにアイデアを提案し続けることです。
採用されないアイデアがたくさん生まれたり、試作がうまくいかなかったりすることもありますが、理由や原因を分析して提案を活性化していきましょう。
デザイン思考の強みは?
デザイン思考の強みは、アイデアの提案が習慣化されること、多様性が身につくこと、論理性のある提案が生まれることです。
デザイン思考はいつ使うべき?
デザイン思考は、「明確なユーザーがいるがニーズや課題が明確でないとき」に使うべきだと考えられます。
デザイン思考はユーザーのニーズをもとにするため、ゼロから開発するときには不向きです。
すでにある商品・サービスを飛躍させたいときに使いましょう。
今回は、デザイン思考について解説しました。
デザイン思考とは、ユーザーのニーズや課題をもとにアイデアを生み出し、効果検証を繰り返しながら解決に取り組むための思考法です。
アイデアの提案が習慣化される、多様性が身につく、論理性のある提案が生まれるといったメリットがあります。
ユーザーが満足できる商品やサービスを作るために、デザイン思考を活用していきましょう。
弊社、株式会社アイデアプラスはお客様が抱える課題を一緒に考え、クリエイティブの力で課題解決・目標達成に向けて伴走いたします。
デザイン思考についてお困りの際は、ぜひ株式会社アイデアプラスにお気軽にご相談ください。
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関口 秀仁
プロジェクトメイカー・ファシリテーター・キッズデザイン
芸大卒業後、Honda mobilityland にてプロデューサーとして鈴鹿サーキット、ツインリンクもてぎなどテーマパーク開発を15年経て、アイデアプラスにて取締役CDO、グループ会社アイデアプラスSDの代表取締役CDOに就任。中小企業向けの新規事業開発、新規商品開発、組織開発などをデザイン思考とチームビルディングを活用、自分も楽しみながら熱量を持ち取り組んでいる。