ペルソナは、効率的なマーケティングに欠かせないものの1つです。
ターゲットとなる顧客像を細かく設定し、架空の人物を作ることによって、商品やサービスの販促に役立てます。
理想的な顧客像が明確になれば、企業側がどのように発信していけば良いか理解でき、成果につながるでしょう。
しかし「ペルソナの作り方がわからない」「作ったのになかなか成果が出ない」という方もいるでしょう。
今回は、マーケティングで重要なペルソナの作り方について、BtoCとBtoB別でそれぞれ詳しく解説します。
ペルソナとは、商品・サービスを利用している典型的な顧客像のことです。
「仮面」を意味するラテン語で、もともとは心理学の用語ですが、ビジネスでも使われるようになりました。
ペルソナは架空の人物で、実在しているユーザーがモデルではありません。
ターゲットとなる顧客の特徴を細かく設定し、実在している人間のようにキャラクターを作り上げます。
ペルソナとターゲットは似ていますが、ペルソナはターゲットよりもかなり詳細に人物像を設定するのが特徴です。
ペルソナ設定のためには、「どのように生活しているのか」がイメージできるように人物像を作り込むことが重要です。
そのためには、以下のような要素で構成する必要があります。
■基本情報 ・名前 ・性別 ・年齢 ・学歴 ・居住地(実家・賃貸・持ち家) ・家族構成 ・性格(価値観・人生観) ・趣味 ・悩み事 ■仕事に関する情報 ・職歴 ・職業 ・役職 ・年収 ・仕事上の目標・課題 ■ライフスタイルに関する情報 ・生活パターン ・休日の過ごし方 ・人間関係 ・買い物をする場所 ・よく使うSNS・サイト・アプリ ・主な情報源(Web・新聞・雑誌・TVなど) など |
悩み事や目標まで細かく設定することで、よりリアルなペルソナが出来上がります。
ペルソナは、マーケティングにおいて重要な役割を果たします。
ペルソナを作る目的は、以下の3つです。
・顧客の視点に立てるから
・顧客への理解が深まるから
・関係者でイメージを共有しやすいから
ペルソナを作ることによって、顧客がどのような悩みや問題を抱えているのかがイメージしやすくなります。
顧客目線で物事を考えられれば押し売りにならず、また商品やサービスの改善点を考えるきっかけにもなります。
結果として、売上や顧客満足度の向上につながるでしょう。
ペルソナを作り込んでいくと、その過程で顧客への理解が深まっていきます。
「この人はどのような人間性で、どのようなことに興味があり、どのような悩みがあるのか」を理解することで、顧客にどのようなコンテンツを提供すべきかが明確になるためです。
例えば、同じ化粧水でも、「ニキビに悩んでいる人」と「シミに悩んでいる人」では訴求の仕方も変わってきます。
このように、ペルソナによって、マーケティングでの課題や解決方法の発見も期待できるでしょう。
詳細なペルソナの設定によって、関係者全体で認識がずれることなく、イメージを共有しやすくなります。
特に複数の人間が関わる場合、メンバーがそれぞれ異なったイメージを持っている場合があります。
すると、意思決定に時間がかかったり、コンテンツの方向性がぶれてしまったりする可能性があるため、注意しましょう。
組織やチームでは、性別も世代も異なるメンバーが所属していることは珍しくありません。
マーケティングの方向性を統一するためにも、ペルソナは重要な役割を持っているといえます。
ペルソナを作る際には注意点があります。
「BtoC」と「BtoB」では作り方が異なること、思い込みで作らないことです。
実際にペルソナを作る前に、これらのポイントを押さえておきましょう。
「BtoC」と「BtoB」では、ペルソナの作り方が異なります。
そもそも両者には、意思決定までのプロセスに違いがあるため、把握しておく必要があるでしょう。
BtoCとBtoBの違い
項目 | BtoC | BtoB |
---|---|---|
ペルソナ | 個人 | 法人・個人 |
購買決定までのプロセス | シンプル | 複雑 |
検討期間 | 短い (衝動買いするケースもある) |
長い |
判断基準 | 悩みを解決できるかどうか (直感・好み・評判など) |
自社の課題を解決できるかどうか (実績・信頼・機能など) |
商品・サービスの利用者 | 購入者 | 購入者とは限らない |
購買決定に関わる人数 | 1名 (購入者のみ) |
5~6名以上 (各部署の担当者、決済の担当者など) |
ペルソナは架空の人物ですが、あまりにも実態とかけ離れてしまっていては意味がありません。
思い込みで作ったり、自社に都合の良いように作ったりしたペルソナでは、十分な成果が出ない可能性があるため避けましょう。
ペルソナを作るときに重要なのは、情報に基づいていることです。
きちんと情報収集がなされ、根拠のあるデータによって設定されたペルソナであるのか、今一度確認しましょう。
ここからは、実際のペルソナの作り方を解説します。
BtoCにおけるペルソナの作り方は、以下の4つのステップに分けられます。
STEP1:ターゲットを明確に決める
STEP2:情報を集める
STEP3:集めた情報からペルソナ像を書き出す
STEP4:運用しながら常にペルソナ像を見直す
ターゲットを明確に決めることにより、自社がターゲットとする顧客の属性が可視化されます。
このとき、「STP分析」を用いるのがおすすめです。
STP分析とはマーケティング戦略に欠かせないフレームワークで、「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の3つのプロセスで構成されています。
まず、セグメンテーションで市場を細分化してターゲットとなる顧客層を特定します。
そしてターゲティングでその顧客層へマーケティング施策を行い、さらにポジショニングで競合他社と差別化した自社のポジションを確立していきましょう。
【関連記事】 ■STP分析についてはこちらの記事をご覧ください。 「ターゲティングとは?なぜ必要?重要性と手法をわかりやすく解説」内 「ターゲティング理解のために知っておきたい「STP分析」 ■「セグメンテーション」や「ターゲティング」についてはこちらの記事もご覧ください。 「セグメンテーションとターゲティングの違い・実践方法をわかりやすく解説」 |
ターゲットが明確になったら、必要な情報を集めていきましょう。
具体的な方法は以下の通りです。
ペルソナの設定に必要な情報収集
・データ収集
・アンケート調査
・インタビュー
・Googleアナリティクスのデータ分析
・セールスへのインタビュー
まずは既存顧客から、年齢・性別・居住地・購入商品などのデータを集めます。
次に、アンケート調査やインタビューを通じて、商品購入やサービス利用に至った経緯をヒアリングしましょう。
アンケートは、作成したアンケートフォームをSNSなどを通じて拡散するのが一般的です。
可能であれば、購入に至らなかった要因もヒアリングすることで、今後のマーケティングに活かせるでしょう。
また、Googleアナリティクスによるデータ分析や、顧客と直接関わりがあるセールスへのインタビューも効果的です。
【関連記事】 ■Googleアナリティクスについてはこちらの記事をご覧ください。 「今すぐできる!Webサイト改善方法を初心者向けにわかりやすく解説します」内 「Google Analytics(グーグルアナリティクス)」 |
次のステップでは、具体的なイメージが湧くように、できるだけ詳細にペルソナ像を設定します。
まずは骨組みとなる情報を書き出し、肉付けしていくイメージです。
生活スタイルや悩み事といった背景やストーリーも含め、リアルな人物像を描いて文章にまとめていきます。
ユーザー目線でいるためにも、自己紹介文を作るように書いていくと良いでしょう。
ユーザーを取り巻く環境やニーズは変わっていく可能性があるため、ペルソナも常に見直して改善していきましょう。
見直しによって完成度の低いペルソナであったとわかった場合には、情報収集のステップからやり直したほうが良いケースもあります。
作成したペルソナは本当にリアルな人物像になっているのか、実際にこのようなペルソナは存在しているのかなどを検証し、ブラッシュアップし続けましょう。
ここでは、BtoBのペルソナの作り方を解説します。
BtoBにおけるペルソナの作り方は、以下の5つのステップに分けられます。
STEP1:ターゲット・バリュープロポジションを明確にする
STEP2:情報を集める
STEP3:法人ペルソナを作成する
STEP4:個人ペルソナを作成する
STEP5:運用しながら常にペルソナ像を見直す
BtoCと同様にまずはターゲットを明確にしますが、あわせてバリュープロポジションも明確にしていきましょう。
バリュープロポジションとは、顧客のニーズが高く、かつ競合他社にはない自社の強みのことです。
BtoBでは、企業の課題解決につながるような商品・サービスの提供が重要視されます。
BtoCのように感情面への訴求によって意思決定されることはないといっていいでしょう。
ターゲットとともにバリュープロポジションを明確にし、誰にどのような価値が提供できるのか、仮説を立てていきましょう。
【関連記事】 ■バリュープロポジションの詳細はこちらの記事をご覧ください。 「バリュープロポジションが必要な理由とは?失敗しない作り方・コツをわかりやすく解説」 |
次に情報を集めていきますが、BtoCのように個人を掘り下げていく必要はありません。
ビジネスに関する情報に絞って調査しましょう。
BtoBのペルソナ作成に必要な情報
・情報
・企業の属性
・社員の属性
・自社や競合他社の商品・サービス利用状況
・企業のニーズ・課題
・社員のニーズ・課題
・企業の経営理念・ミッション
情報収集の方法
・自社の顧客データ
・顧客と接触のある部署へのヒアリング
・自社サイトのデータ
・アンケート調査
・インタビュー
・自社や競合他社の導入事例
・Webや書籍などの資料
BtoCと比べると、BtoBはターゲットの分母が少なく、アンケート調査やインタビューによる回答数は期待できません。
既存の顧客データの分析や、顧客と直接接触のある部署に協力してもらうなど、社内にある情報を整理すると良いでしょう。
情報を集めたら、法人ペルソナを作成しましょう。
ポイントは、自社にとって重要な企業を想定して作成することです。
法人ペルソナで設定すべき項目
・業界・業種
・規模
・所在地
・事業内容
・企業理念・ミッション
・課題
既存の商品・サービスであれば、自社の収益源ともいえる上位の顧客の情報も反映しましょう。
購買の意思決定に複数人が関わるBtoBでは、商品・サービスの購入に影響力のあるキーパーソンを想定して個人ペルソナを作成します。
個人ペルソナで設定すべき項目
・名前
・年齢
・性別
・所属部署
・役職
・業務内容
・業務上の課題
・社内でのポジション
・仕事への姿勢
まず購買に関わる複数人のペルソナを作成し、キーパーソンを絞り込んでいく方法もおすすめです。
法人ペルソナと個人ペルソナを作成したら、運用しながら常に見直して改善していきます。
カスタマージャーニーマップを活用し、戦略の設計や施策の立案などに役立てましょう。
【関連記事】 ■カスタマージャーニーマップの詳細はこちらの記事をご覧ください。 「カスタマージャーニーマップ: 顧客体験の可視化」 |
ここでは、アイデアプラスでの事例も交えてペルソナを使ったマーケティングの成功事例を紹介します。
・アイデアプラス
・日立グローバルライフソリューションズ
・スープストックトーキョー
まずは、弊社アイデアプラスが携わった「3x3CROSS」プロジェクトでの事例をご紹介いたします。
プロジェクトの概要は、中部大学様の学生と佐橋工業様の共同研究を目的とした新規事業開発で、弊社は「マーケティング視点での進行」として携わらせていただきました。
まずはこのプロジェクトを通じて自分たちが何をしていくのか決めるため、アイデア出しとして「日常生活の些細なことから感じる課題」を探すことにしました。
学生を対象に情報収集をしたところ、バイト先の飲食店やコンビニなどでのゴミ捨てを憂鬱に感じている学生が多いことが判明し、結果として「不快な作業と思われているごみ捨てが楽しくなるようなゴミ箱を作ること」をテーマとして設定しました。
そこからは、これからつくる「ゴミ箱」のユーザーの解像度を上げるため、具体的なペルソナ像を描いていきました。
ペルソナを設定していく過程では、「バイト先でのゴミ捨てあるある」を挙げるなど、学生ならではの実体験の話を共有しながら進めることができました。
各自が「自分ごと」として考えられるトピックだったこともあり、様々なシチュエーションを実体験に基づきながら想定することができたことで、解像度の高いペルソナ像が完成しました。
ペルソナを設定したあとは、カスタマージャーニーマップを作成し、バリュープロポジションキャンバスへと落とし込み、さらにアイデアを具体化させていきました。
このように、しっかりとペルソナを設定することは、カスタマージャーニーマップやバリュープロポジションキャンバスなどその先のステップへも繋げることができます。
日立グローバルライフソリューションズは、業務用エアコンの市場シェアを9.8%から11.1%にアップさせました。
BtoBのペルソナマーケティングで有名な成功事例の1つです。
設備店の経営者である「旭立信彦」が、1800社以上の設備店にアンケートやインタビューを実施し、現場のリアルな声を集めることに成功して課題解決につなげました。
ペルソナマーケティングの代表例ともいえるスープストックトーキョーは、創業から10年で売上42億円を達成しました。
「秋野つゆ」というキャリアウーマンをブランドのペルソナに設定し、商品開発や店舗開発などの基準にしました。
「装飾性よりも機能性を好む」「平泳ぎではなく豪快にクロールで泳ぐ」など、細かなプロフィールを作り込み、マーケティングに成功しています。
ここから、ペルソナの作り方についてよくある質問に回答していきます。
・ペルソナを作るときは細かくしすぎないほうがいいのか?
・ペルソナを作るデメリットは?
・ペルソナを作るときに大切なことは何か?
今回は、ペルソナの作り方について解説しました。
ペルソナはBtoCとBtoBでは作り方が異なり、前者は4つのステップ、後者は5つのステップで作成します。
ペルソナを作ることで、顧客の視点に立ったり顧客への理解が深まったりするだけでなく、関係者でのイメージ共有にも役立ちます。運用しながら常に見直し・改善に努め、効果的なマーケティングにつなげていきましょう。
弊社、株式会社アイデアプラスはお客様が抱える課題を一緒に考え、クリエイティブの力で課題解決・目標達成に向けて伴走いたします。
ペルソナの作り方でお困りの際は、ぜひ株式会社アイデアプラスにお気軽にご相談ください。
新しいことへの挑戦を全力でお手伝いさせて頂きます!
長谷川 歩楽 ファシリテーター
愛知県出身。工業系の大学院時代に学生起業として組織を設立。地元の中小企業から大手企業まで様々な規模/業種の企業の中で新事業開発や商品開発のファシリテーションを担当。 その後、アイデアプラスでも産官学連携の共同研究の場や製造/飲食業界などでのファシリテーションを行う。
長谷川 歩楽 に