録音も文字起こしも残っている。議事録もその日のうちに共有された。それでも翌週の会議が「あれ、結局どうなりましたっけ」から始まってしまう、という状況はありませんでしょうか?
生成AIの導入で議事録づくりの手間は確かに軽くなりました。しかし会議の数は減らず、決まったことが実行に移らない状態のまま止まっている企業は少なくありません。
議事録の作成はすでに最も活用が進んだ用途です。だからこそ次に差がつくのは、議事録の後ろにある「何が決まったのか」「誰がいつまでに何をするのか」を確定させる工程です。
本記事では、会議の記録ではなく決定とタスクを残すために、AIにどこまで任せ、どこから人が確定させるのかという運用設計について解説していきます。
総務省の令和8年版情報通信白書によると、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した企業は86.4%にのぼりました。業務類型別の活用率では「議事録・メール作成補助」が約7割で最も高く、導入効果を実感していると回答した割合も同じく約7割で、他の類型より顕著に高い結果が示されています。
活用率と効果実感がいずれも最上位にあるということは、議事録作成をAIに任せること自体は、もはや珍しい取り組みではないということです。同白書では、生成AIを積極的に活用する方針、または活用する領域を限定して利用する方針と回答した企業の割合が、日本において68.9%であったことも示されています。2024年度調査の49.7%から大きく上昇し、大企業で74.0%、中小企業で58.1%という水準です。
議事録が整っていても、決定事項が本文のどこかに埋もれ、タスクが誰の手元にも渡らなければ、会議は前に進みません。記録を作るコストと、決めたことを実行に移すことは、別の問題だからです。
主要な会議ツールの公式情報を見ると、任せられる範囲は文字起こしと要約から、次の行動の提示まで広がっています。
Microsoftの公式ドキュメントでは、Teamsの会議終了後にRecapタブから、AIによる会議メモとAIが推奨するタスク、誰がいつ発言したかを示すタイムラインマーカー、会議を話題ごとに分けるチャプターを利用できると説明されています。Google Workspaceも公式に、Google MeetのGeminiが会議中のメモとアクションアイテムを取得し、議事録と次のステップをドキュメントへ自動的に整理すると説明しています。
Googleは2025年8月7日の公式アップデートで、会議メモ機能における「suggested next steps」の対応言語に、日本語を含む7言語を追加したことを公表しています。日本語で行う会議でも、次の行動の候補が自動的に拾われる状態になったということです。
ここで押さえておきたいのは、これらがいずれも推奨・提案という位置づけであるという点です。総務省と経済産業省が公表したAI事業者ガイドライン(第1.1版)でも、AIに単独で判断させるだけでなく、適切なタイミングで人間の判断を介在させる利用を検討することが示されており、AIによる評価や推奨を人間が鵜呑みにしないための対策が求められています。AIが候補を出し、人が決定として確定させる。この線引きが運用設計の軸になります。
アジェンダを「○○について」ではなく「○○を決める」と書き換えてください。それだけで、会議で確認すべき論点と、終了時に確定させるべき内容が明確になります。決めることが書けない会議は、集まらずに共有だけで足りることも見えてきます。
AIの会議メモや推奨タスクは、文字起こしが有効になっていることが前提です。Microsoftの公式ドキュメントでは、この機能の利用にTeams PremiumまたはCopilotのライセンス割り当てと、文字起こしを有効にする設定が必要であり、録画がオフの場合は録画・発言者・話題・チャプターのない形になると説明されています。使える前提を整えないまま運用を始めると、肝心な会議の記録だけが残らないという事態が起こります。
AIが生成した要約をそのまま共有せず、会議の最後の数分を使って、決定したこと、保留にしたこと、誰がいつまでに何をするかの3区分に整理し、その場で参加者に確認して確定させてください。AIの下書きがあるため、この確認作業そのものは数分で終わります。
会議ツールが提示したタスク候補は、普段使っているタスク管理の場所へ必ず寄せてください。議事録の中にしか存在しないタスクは、ほぼ確実に忘れられます。社内の情報を探せる形に整えるという考え方は、引き継ぎの負担を劇的に削減!AIによる動画マニュアル自動生成と社内教育の効率化でも触れています。
会議の音声や文字起こしには、参加者の氏名や取引先に関する情報が含まれます。個人情報保護委員会は「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日)において、個人情報を含むプロンプトを入力する際は、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること、入力した個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合には、提供事業者が機械学習に利用しないこと等を十分に確認することを示しています。法人向けの環境を選ぶこと、録音を事前に周知することは最低限の前提です。なお個別の適法性の判断は、公式のガイドラインや専門家にご確認ください。
誰が録音を開始するのか、記録をどこまで共有するのか、いつ削除するのか。これらを決めておかないと、運用は担当者ごとの判断に委ねられてしまいます。社内での取り扱いルールづくりについては、ツール禁止で終わらせない!リスクを防ぎ成果を出すための「社内AI利用ガイドライン」策定のポイントもあわせてご覧ください。
AIを入れても、結論の出ない会議から結論は出ません。参加者、時間、その場で決められる人がいるかを見直す作業は、人の仕事として残ります。会議運営の基本については、会議を成功させる!ファシリテーターの役割とは?をご覧ください。
「議事録は自動で作れるようになったが、会議が前に進んだ実感がない」「要約は届くが、タスクが誰の手元にも渡っていない」とお悩みの企業は少なくありません。
うまくいかない原因の多くは、ツールの性能ではなく、会議の目的設定や決定の確定手順をそのままにしてAIを足してしまうことにあります。アジェンダの書き方を変える、終了前の5分を確定作業にあてるといった運用の見直しが、実は成果を大きく左右します。
弊社の「AIディレクター」サービスでは、貴社で実際に行われている会議の進め方をうかがったうえで、対象とする会議の選定から、安全に使える環境の整備、担当者が迷わず運用できる手順づくりまでをトータルでサポートさせていただきます。導入して終わりにせず、定着するまでプロが伴走いたしますので、ぜひご相談ください。
本記事では、議事録づくりで終わらせず、会議の決定事項とタスクを確定させるためのAI活用の進め方について解説しました。議事録作成はすでに最も活用が進んだ用途です。次に取り組むべきは、AIが提示する要約とタスク候補を一次案として受け取り、決定事項と担当・期限を人が確定させる手順を会議に組み込むことです。まずは1つの定例会議から、アジェンダの書き方と終了前の5分を変えてみてください。
弊社、株式会社アイデアプラスはお客様が抱える課題を一緒に考え、最適なソリューションの導入から運用まで伴走いたします。会議運営の効率化や社内業務の改善でお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。