ブランドエクイティとは?5つの要素と戦略ブランドエクイティとは?5つの要素と戦略
2025年9月17日

ブランドエクイティとは?5つの要素と戦略

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ideaCompass編集部
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ブランドエクイティとは?5つの要素と戦略
ブランドエクイティという言葉を聞いたことはありますか?
現代のビジネスにおいて、価格競争を避けながら長期的な収益を確保するために欠かせない概念です。

ブランドエクイティとは、ブランドが持つ無形の価値のことで、顧客の心の中に蓄積された信頼や愛着が企業の競争優位性を生み出します。
この記事では、ブランドエクイティの基本概念から具体的な戦略まで、実務に活かせる知識をわかりやすく解説します。

ブランドエクイティとは何か?基礎から理解するために

ブランドエクイティとは、ブランド名やロゴがあることで生まれる付加価値のことです。
具体的には、同じような商品でも「このブランドなら安心」「このロゴを見ると欲しくなる」といった顧客の心理的な反応によって生まれる価値を指します。

例えば、同じスペックのスマートフォンでも、AppleのiPhoneの方が高価格で売れるのは、Appleブランドが持つエクイティの力です。
ブランドエクイティは企業の無形資産として会計上も評価され、M&Aや企業価値算定の際に重要な要素となります。

また、顧客の購買決定プロセスにおいて、商品選択の判断基準として機能し、企業にとって持続的な競争優位性をもたらします。

なぜブランドエクイティが現代ビジネスで重視されるのか

現代の市場環境では、商品の機能的差別化が困難になっており、ブランドエクイティの重要性が高まっています。

技術の進歩により、競合他社との品質格差が縮小している中で、顧客は機能以外の価値を求めるようになりました。
例えば、コーヒーチェーンにおいて、スターバックスが高価格でも選ばれるのは、空間体験やブランドイメージという付加価値があるからです。

また、デジタル化により情報が溢れる中で、信頼できるブランドへの依存度が増しています。
顧客は選択肢が多すぎる状況で、知っているブランドや好感を持っているブランドを選ぶ傾向が強くなっており、これがブランドエクイティの価値を押し上げています。

ブランドエクイティの5つの構成要素とは

ブランドエクイティは複数の要素が組み合わさって形成されます。

ここでは、マーケティング分野で広く認められている5つの主要構成要素を詳しく解説します。
これらの要素を理解することで、自社のブランド戦略をより効果的に設計できるようになります。

1. ブランド認知:知ってもらうことの価値

ブランド認知とは、顧客がブランド名を知っている度合いを表します。

認知には段階があり、最も基本的な「ブランド名を聞いたことがある」というレベルから、「商品カテゴリーで最初に思い浮かぶ」というトップオブマインドまで幅があります。
例えば、「検索エンジンといえば?」と聞かれて真っ先に「Google」が浮かぶのは、強力なブランド認知の例です。

認知度の向上は、購買選択肢に入るための必要条件であり、特に新商品の導入時や新市場参入時には重要な要素となります。
認知度が高いブランドは、店頭での選択確率や広告効果も高くなる傾向があります。

2. ブランドロイヤリティ:継続的な支持を得る力

ブランドロイヤリティは、顧客がそのブランドを継続的に選び続ける傾向を示します。

ロイヤリティの高い顧客は、競合の割引キャンペーンがあっても自分の好きなブランドを選び続け、さらに他の人にそのブランドを推奨する傾向があります。
具体的には、iPhoneユーザーが新機種発売時に他のスマートフォンを検討せずにApple製品を選ぶ行動が典型例です。

高いロイヤリティを持つ顧客は、生涯価値(LTV)が高く、新規顧客獲得コストも削減できるため、企業にとって極めて価値の高い存在となります。

3. 知覚品質:価格を超える品質の印象

知覚品質とは、顧客が感じるブランドの品質レベルを表します。

重要なのは、実際の品質ではなく顧客が感じる品質である点です。
例えば、高級時計ブランドのロレックスは、技術的には他のブランドと大差がなくても、「最高級の品質」という印象を顧客に与えています。

知覚品質が高いブランドは、価格プレミアムを獲得でき、顧客の満足度や推奨意向も高くなります。
また、新商品への期待値も高まり、ブランド拡張の成功確率も向上します。

4. ブランド連想:イメージが購買行動に与える影響

ブランド連想とは、ブランドを見聞きした時に顧客の頭に浮かぶイメージや感情のことです。

強力なブランド連想を持つ企業として、ディズニーが挙げられます。
ディズニーと聞けば「魔法」「夢」「家族の絆」といったポジティブなイメージが瞬時に浮かび、これらの連想が商品購入やテーマパーク来園の動機となります。

ブランド連想は、差別化の源泉となり、競合との機能的な比較を避けながら顧客の感情に訴えかけることができます。
また、一度形成された強い連想は変更が困難なため、長期的な競争優位性を生み出します。

5. その他の資産価値:商標・独自技術・チャネルの強み

その他の資産価値には、法的保護される商標権や独自技術、流通チャネルとの関係性などが含まれます。
例えば、コカ・コーラの独自レシピや商標権、任天堂の特許技術、AppleのApple Storeという独自販売チャネルなどがこれに該当します。

これらの資産は模倣困難性が高く、競合他社による追随を防ぐ効果があります。

様々な資産価値
資産タイプ 具体例 競争優位性への影響
商標権 ロゴ、ブランド名 法的保護による模倣防止
独自技術 特許、ノウハウ 技術的差別化
チャネル関係 専売店、独自店舗 流通面での優位性

ブランドエクイティを高めるメリット

ブランドエクイティの向上は、企業に多面的で持続的な利益をもたらします。

ここでは、特に重要な3つのメリットについて詳しく解説します。
これらのメリットを理解することで、ブランド投資の重要性とその効果を具体的に把握できるでしょう。

競合との差別化と優位性の確立

強いブランドエクイティは、機能的な差別化が困難な市場において決定的な競争優位性を生み出します。

例えば、プレミアムジーンズ市場では、リーバイスが歴史と伝統というブランドストーリーによって、後発の競合ブランドとは異なるポジションを確立しています。
顧客は単なる衣類としてではなく、「アメリカンカルチャーの象徴」として購入するため、価格や機能だけでは比較されません。

このような感情的な差別化は模倣が困難で、一度確立されると長期間にわたって競争優位性を維持できます。

価格プレミアムの獲得と収益性の向上

ブランドエクイティの高い商品は、同等の機能を持つ競合商品よりも高価格で販売できます。

具体的には、スターバックスのコーヒーは原価的には他のコーヒーチェーンと大差がないにも関わらず、ブランド体験への対価として高価格が受け入れられています。
この価格プレミアムは、粗利率の向上に直結し、企業の収益性を大幅に改善します。

差別化のメリット
・価格競争の回避:ブランド力により値下げ圧力を軽減
・粗利率の向上:同じコストでより高い売価を実現

新規事業・ブランド拡張のしやすさ

確立されたブランドエクイティは、新商品や新市場への参入を容易にします。

Amazonは書籍販売から始まりましたが、「信頼できるオンラインショッピング」というブランドイメージを活用して、クラウドサービス(AWS)から食品配達まで事業領域を拡大しました。
既存のブランド信頼度により、顧客は新サービスに対しても好意的な反応を示し、参入コストを大幅に削減できています。

ブランドエクイティを測定する方法

ブランドエクイティの効果的な管理には、適切な測定方法の選択と実施が不可欠です。

ここでは、実務で活用されている主要な測定手法を、定量的指標から理論的フレームワークまで体系的に解説します。
これらの手法を組み合わせることで、より精度の高いブランド診断が可能になります。

定量的指標:CSI、NPS、ブランド価値評価

CSI(顧客満足度指数)は、ブランドに対する顧客の満足レベルを数値化する指標です。
0~100のスケールで測定され、業界平均との比較や時系列での変化追跡が可能です。

例えば、自動車業界では各メーカーのCSIスコアが定期的に発表され、ブランドの競争力を客観的に評価する指標として活用されています。

NPS(ネットプロモータースコア)は、「このブランドを友人に推奨する可能性」を-100から+100で評価します。
推奨者(9〜10点)から批判者(0〜6点)の割合を引いた値で、顧客ロイヤリティの強さを測定できます。

アーカーのブランド・エクイティモデルとは

アーカーモデルは、前述した5つの構成要素(認知・ロイヤリティ・知覚品質・連想・その他資産)を体系的に測定するフレームワークです。

各要素について具体的な質問項目を設定し、総合的なブランドエクイティスコアを算出します。
例えば、認知度は「ブランド名の再生率」「適正な想起率」で、ロイヤリティは「継続購入意向」「推奨意向」で測定します。

このモデルの特徴は、要素別の強み・弱みが明確になることです。

ケラーのCBBEモデル(顧客ベースのブランド・エクイティ)

CBBEモデルは、ブランドエクイティを4段階のピラミッド構造で捉えます。
最下層の「ブランド認知」から始まり、「ブランド連想」「ブランド反応」を経て、最上層の「ブランド共鳴」に至る構造です。

各段階で顧客の心理的変化を測定し、ブランドとの関係深度を評価します。
特に最上層の「共鳴」は、強力なブランドコミュニティの形成を示す重要な指標です。

ブランドエクイティを高めるための戦略と施策

ブランドエクイティの向上には、戦略的で一貫性のあるアプローチが必要です。

ここでは、現代のマーケティング環境で特に効果的な4つの戦略を、実践的な観点から詳しく解説します。
これらの戦略を組み合わせることで、持続的なブランド価値の向上を実現できます。

一貫性あるブランドメッセージの構築

すべてのタッチポイントで統一されたメッセージを発信することが、ブランドエクイティ向上の基盤となります。

例えば、ナイキは「Just Do It」というメッセージを30年以上にわたって一貫して使用し、挑戦と成長というブランド価値を確立しました。
広告、店舗デザイン、商品パッケージ、SNS投稿まで、すべてのコミュニケーションでこのメッセージが貫かれています。

一貫性を保つためには、ブランドガイドラインの策定と組織全体での共有が重要です。
ビジュアルアイデンティティから言葉遣い、価値観まで詳細に規定し、関係者全員が同じ理解を持てるようにします。

顧客体験(CX)の向上によるロイヤリティ強化

顧客との接点すべてでポジティブな体験を提供することで、ブランドロイヤリティを高められます。

アマゾンは「地球上で最もお客様中心の企業」を掲げ、注文から配送、アフターサービスまでの全プロセスで顧客満足を追求しています。
具体的には、ワンクリック注文、当日配送、簡単な返品プロセスなど、顧客の負担を最小化する仕組みを構築しました。

CX向上には、カスタマージャーニーマップの作成と各タッチポイントでのペインポイント解消が効果的です。

SNSとコンテンツを活用したブランド認知の拡大

デジタルチャネルを活用したコンテンツマーケティングは、認知度向上とブランド連想の強化に効果的です。

レッドブルは、エネルギードリンクの売り上げよりも、エクストリームスポーツのコンテンツ制作に注力することで知られています。
YouTubeやInstagramで配信するスポーツ動画により、「冒険」「限界突破」というブランドイメージを若年層に浸透させ、商品購入につなげています。

効果的なコンテンツ戦略には、ターゲット顧客の興味・関心に合わせた価値ある情報提供と、ブランドメッセージの自然な組み込みが重要です。

ブランドパートナーシップやコラボ戦略の活用

他ブランドとの戦略的提携により、相互のブランド価値を高め合うことができます。

ユニクロとジル・サンダーのコラボレーション「+J」は、ユニクロが高級感とデザイン性を、ジル・サンダーが大衆へのアクセスを獲得した成功例です。
両ブランドの強みを組み合わせることで、新しい顧客層の獲得と既存顧客の満足度向上を同時に実現しました。

パートナーシップの成功には、ブランド価値の相互補完性とターゲット顧客の親和性の検証が重要です。

ブランドエクイティ向上に成功した企業事例

優れたブランドエクイティを構築した企業の事例を学ぶことで、成功の法則と実践的なヒントを得ることができます。

ここでは、異なるアプローチで成功を収めた3社の戦略を詳しく分析し、それぞれの特徴と学ぶべきポイントを解説します。

ナイキ:感情に訴えるストーリーテリングの力

ナイキは商品の機能性よりも、「限界を超える」という感情的価値にフォーカスしたブランド戦略で成功しました。

「Just Do It」キャンペーンでは、有名アスリートだけでなく一般の人々の挑戦する姿も取り上げ、幅広い層に「自分も頑張れる」という感情を喚起しました。
具体的には、マイケル・ジョーダンの成功談だけでなく、失敗から立ち上がる物語も積極的に発信し、ブランドに人間味のある親しみやすさを与えています。

この戦略により、ナイキは単なるスポーツ用品メーカーではなく、「挑戦を支援するパートナー」というポジションを確立し、強い感情的つながりを顧客と築いています。

ユニクロ:品質とコストのバランスによる信頼構築

ユニクロは「高品質・低価格」というシンプルで明確な価値提案により、実用的なブランドエクイティを構築しました。

ヒートテックやエアリズムなど、独自技術による機能性と手頃な価格を両立させることで、「良いものを安く買える信頼できるブランド」という印象を定着させました。
また、シンプルで洗練されたデザインにより、年齢・性別を問わない幅広い支持を獲得しています。

ユニクロの成功要因は、派手な広告よりも商品の実用性と店舗体験に注力し、顧客の日常生活に溶け込むブランドポジションを築いたことです。

スターバックス:体験価値の一貫性とブランドコミュニティ

スターバックスは、コーヒーの販売ではなく「第3の空間」という体験価値の提供によりブランドエクイティを構築しました。

世界中どの店舗でも同じような居心地の良い空間と質の高いサービスを提供することで、顧客に安心感と特別感を与えています。
また、季節限定商品やタンブラーなどのコレクタブルアイテムにより、顧客との継続的な接点を創出し、強いブランドコミュニティを形成しています。

店舗スタッフ(パートナー)の教育に多大な投資を行い、ブランド体験の品質を一定水準以上に保つことで、顧客満足度と従業員満足度の両方を向上させています。

まとめ

ブランドエクイティの構築と向上は、長期的視点での継続的な取り組みが必要です。

最も重要なのは、5つの構成要素のバランスを意識することです。
認知度だけ高くても品質が伴わなければ、長期的なブランド価値は築けません。
また、顧客視点での一貫した体験設計により、すべてのタッチポイントでブランド約束を履行することが成功の鍵となります。

測定と改善のサイクルを回し続け、市場環境の変化に応じた戦略調整を行いながら、自社らしいブランドエクイティを育てていくことが、持続的な競争優位性につながります。
まずは現状のブランドエクイティを正確に把握することから始めてみてください。

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