ゴールデンサークルで人の心を動かすマーケティング!
活用方法を解説
競争の激化する市場の中で、「どのように自社をアピールすれば良いのか?」「どうすれば顧客の心をつかめるのか?」という疑問や課題を抱えている人も多いでしょう。
その問いに端的に答えるのが「ゴールデンサークル理論」です。
ゴールデンサークル理論の主張は、「Whyから始めよ」。
この理論を紐解くと、人の心を動かすためには「なぜするのか」が重要であり、説明の順番にも工夫が必要だという内容が見えてきます。
本記事ではゴールデンサークルについて紹介し、マーケティングでの活用方法と併せて解説します。
ゴールデンサークル理論とは、マーケティングコンサルタントのサイモン・シネック(Simon Sinek)氏が2009年に「TED」のプレゼンテーション(※1)で提唱した、人の心の動かし方に関する理論です。
同プレゼンテーションの動画は「TED」の中でもトップクラスに再生されており、弊社、株式会社アイデアプラスでも研修のために使用しています。
ゴールデンサークル理論の中で、人を動かす優れたリーダーは「ゴールデンサークル」というシンプルなパターンによって他人の行動を促している、と語られています。
ゴールデンサークルは、上図のように「Why(なぜするのか)」・「How(どうやってするのか)」・「What(何をするのか)」の3つの同心円で構成されています。
図の内側から外側に向かって「Why」→「How」→「What」の順番で物事を説明する方が、人の心に刺さりやすいという意味を示しているのです。
具体例を見てみましょう。 ゴールデンサークルの具体例:Apple
項目 |
概要 |
具体例 |
Why |
なぜするのか |
「私たちのすることが世界を変える」「違う考え方に価値がある」という信念があるから |
How |
どうやってするのか |
「美しくシンプルなデザイン」で「誰もが直感的に使いやすい」製品の開発によって |
What |
何をするのか |
「iPhone」「Mac」などの製品を販売する |
Appleでは、上表のような内容のゴールデンサークルが想定されます。
「Why」から始める、つまり「私たちのすることが世界を変える」という信念を伝えるところから始めることで、顧客の気持ちをグッと引き寄せられます。
そして「Why」に続けて「美しいデザインによって(How)」「iPhoneを販売する(What)」という順番で説明し、顧客の購買行動につなげていくというのが、ゴールデンサークル理論なのです。
以上の例は、一般的な伝え方と比べて何が違うのでしょうか。次項で解説します。
一般的な伝え方との違い
よく見かける「この製品の、ここが凄いんです!」という広告は、製品の特長である「How」に焦点を当てています。
実際のところ、「What」や「How」ばかりを主張している広告やマーケティングが一般的です。
広告以外でも、プレゼンテーションで「What」→「How」→「Why」の順番で説明している場合が散見されます。
しかしこのような伝え方では、「What」の内容が前面に出過ぎてしまい、顧客が自分ごととして捉えづらくなってしまいます。
一方で「Why」の内容が先に来ると、顧客は共感を覚え、「自分にとってこの製品がある生活はどんな感じだろう」と考えやすくなるのです。
つまり、ゴールデンサークルに基づいた伝え方と一般的な伝え方との違いは、「人の感情に深く訴えられるかどうか」といえるでしょう。
ゴールデンサークル理論で人が動く理由について、サイモン・シネック氏は「心理学ではなく、生物学的に説明できる」と述べています。
人の脳の構造を見ていくと、確かにヒントがあるようです。
人の脳は、中央に本能や感性などを司る「大脳辺縁系」があり、その外側に知識や知性などを司る「大脳新皮質」があります。
中央の大脳辺縁系は直感的で、言語能力はありません。
外側の大脳新皮質は理性的で、言語能力があります。
このような構造の脳に対し、最初に「Why」を伝えると、大脳辺縁系の直感的な部分を刺激できます。
そして、顧客の感情が揺さぶられ、話を聞く姿勢になったタイミングで「How」や「What」の内容を伝えれば、理性的な部分で内容を理解してもらえるのです。
言い換えれば、最初に「What」を伝えても、大脳辺縁系に言語能力はないため、細かい数字や製品のアピールは直感的に捉えられません。
当然、心が動いていない状態では次の話も入りにくくなります。
脳の構造上、まずは感情を捉え、心が動いたところで詳細な説明をした方が、人は納得感をもって行動しやすくなるのです。
ゴールデンサークル理論をマーケティングに活用する方法
ゴールデンサークル理論は、相手に「何を伝えるべきか」というマーケティングの本質に関係しています。
ここでは、ゴールデンサークル理論をマーケティングに活用する方法を、以下の3つに分けて解説します。
・「Why」自社の価値観・信念を伝える
・「How」ユーザーのベネフィットを伝える
・「What」商品やサービスの詳細を伝える
「Why」
自社の価値観・信念を伝える
ゴールデンサークル理論で最も重要な「Why」の部分には、マーケティングにおける「自社のミッション」「ビジョン」を当てはめてみましょう。
ミッションは企業が成すべき使命や存在意義を指し、ビジョンは企業が実現したい未来を意味します。
マーケティングやブランディングのためには、ビジョンの実現に向けて積み重ねるべきミッションを考え続ける必要があります。
「大きな夢」と「そのために努力していること」の両方を見て、初めて人は納得し、心が動くでしょう。
多くの人に自社の魅力を伝えるためにも、まずはミッションやビジョンを構築し、自社の価値観や信念を語ることが重要です。
「How」
ユーザーのベネフィットを伝える
「How」の部分には、顧客が「どうやって」幸せになるのか、というベネフィットを当てはめましょう。
ターゲットが抱える課題に寄り添い、自社の製品やサービスなら解決できるという内容を、わかりやすく伝えることが大切です。
ベネフィットの効果的な伝え方について考えることも、「How」の部分では特に重要なポイントです。
いわゆる「見せ(魅せ)方」というもので、製品・サービスによって方法は大きく異なります。
自社ブランドやサービスが社会に浸透する工夫や、顧客が理解しやすい方法などを深く検討しましょう。
「What」
商品やサービスの詳細を伝える
ゴールデンサークルの最も外側に位置する「What」には、自社ブランドや商品・サービスが「何」なのか、具体的な内容を当てはめます。
顧客がベネフィットを得られる自社ブランド・商品・サービスは何なのか、具体的に想像しやすいような伝え方をしましょう。
「What」は「How」同様、必要に応じて商品・サービスの変更や、大元のプロジェクトの見直しを行います。
ただし、自社の価値観・信念を伝える「Why」については、企業・ブランドとしてブレないように一貫した軸を持っておき、簡単に変えるべきではありません。
マーケティングにおいてゴールデンサークル理論を当てはめた戦略の一つに、「ブランドストーリーを作る」という方法があります。
ブランドストーリーとは、自社の果たすべきミッションを、自社の価値観や世界観と絡めて具体的なストーリーに落とし込んだものを指します。
つまり、「商品・サービスがどのように誕生したのか」「なぜ作ったのか」などの「Why」を、顧客に伝わりやすいような物語にする方法です。
ブランドストーリーを作る際には、他社とは異なる独自性の高い内容にするよう心がけましょう。
多くの人に共感してもらえるように普遍的な内容にしてしまうと、平凡でありきたりなストーリーになり、競合他社との差別化ができず埋もれてしまう可能性があります。
自社にしかない価値や信念だけでなく、唯一無二の歴史や経験を組み合わせた、ユニークで説得力のあるブランドストーリーを作成しましょう。
サイモン・シネック氏は、Appleのプレゼンテーションなどを見たのがきっかけでゴールデンサークル理論を発見したそうです。
ここでは弊社アイデアプラスにおけるゴールデンサークル活用の例を紹介します。
さらにゴールデンサークル理論活用に成功した企業例として、Apple・Wantedlyの事例も詳しく解説します。
アイデアプラス
本記事ではゴールデンサークルをマーケティング手法のひとつとしてご紹介していますが、弊社アイデアプラスでは社員教育の一環として「ゴールデンサークル」理論について学ぶ時間を設けています。
社員に対して自社の存在意義や付加価値を明確に伝え、共感を促すことでモチベーションを向上させ、組織全体の一体感を高めることを目的としています。
実際のところ、この取り組みを実施してから従業員ひとりひとりが組織文化を深く理解するようになり、ぞれぞれの意識改革や目標意欲の深まりへと繋がりました。
当初の目的は従業員全体に組織としての目的や理念を浸透させることでしたが、会社全体がゴールデンサークルの考え方をベースとして持つようになったことで、結果としてパートナー企業の皆様からもお褒めの声をいただく機会が増えました。
このようにゴールデンサークルの本質は「人の心を動かすこと」であり、さまざまなシチュエーションに応用できる考え方だといえます。
Apple
スマホやパソコンなどを取り扱うAppleは、製品自体の説明よりも「なぜ販売するのか」「Appleの考える未来」の説明に重点を置いています。
テレビCMなどでも確認できますが、「Apple製品を使っている人間や世界」の発信がメインであり、製品の詳細な機能は説明されません。
「こんな世界になったら良いよね」という「Why」こそが、顧客に刺さるのだと理解したマーケティング方法なのです。
Apple製品が次々とヒットし、ファンに愛され続けている理由は、「Appleの信念や価値観が何度も繰り返し伝えられることで、顧客の共感を生んでいるため」といえるでしょう。
また、Appleはゴールデンサークルの中心である「Why」に対して「How」と「What」が紐づきやすく、Appleの製品と信念がリンクしているため、顧客の納得感が高く成功した事例ともいえます。
Wantedly
求人情報サイトのWantedlyは、企業と求職者のマッチングがサービスであるにもかかわらず、求人募集企業に対して「求人情報の欄に給与や待遇を記載できない」という珍しい制限を設けています。
その代わり、Wantedly上で大々的に掲載できるのは企業のビジョンやミッションです。
企業に「Why」を語ってもらうことが、結果として企業と求職者の良いマッチングにつながるという考えに基づいているのでしょう。
この仕組みにより、給与や待遇を手厚くするのが難しいスタートアップ企業でも、企業の思いに共感した求職者を採用できるなどのメリットが生じました。
実際、Wantedlyの登録ユーザー数・登録企業数は右肩上がりで、業績も順調に伸びています。
Wantedlyはゴールデンサークル理論によって成功をつかんでいるのです。
ここまで、ゴールデンサークル理論を企業活動やマーケティングの文脈で解説してきましたが、ゴールデンサークルの本質は「人の心を動かすこと」です。
この本質に立ち返ると、様々な活動に応用できます。
例えば、ワークショップへの応用が可能です。
ワークショップでは複数人でグループになりコミュニケーションを取りますが、参加者の取り組む姿勢はバラバラです。
運営側は、「参加者を引きつけられない」「積極的になってもらえない」などの課題をよく抱えています。
原因として想定されるのは、ファシリテーターが「何をするのか」という「What」ばかりを説明してしまい、「Why」の説明が不足しているパターンです。
「なぜこのワークショップをやるのか」という動機がなければ、主体性や共感が生まれづらく、全員がなんとなく作業するだけの「面白くないワークショップ」になりかねません。
多くの人に積極的に行動してもらうためには、全員に「Why」を正しく理解してもらってから、具体的な作業の説明に入ることをおすすめします。
ここから、ゴールデンサークル理論についてよくある質問に回答していきます。
・ゴールデンサークルを提唱したのは?
・ゴールデンサークル理論の順番は?
・ゴールデンサークルの具体例は?
ゴールデンサークルを提唱したのは?
ゴールデンサークルは、マーケティングコンサルタントのサイモン・シネック(Simon Sinek)氏が2009年に「TED」のプレゼンテーションで提唱しました。
出典:TED「Simon Sinek: How great leaders inspire action」
ゴールデンサークル理論の順番は?
ゴールデンサークル理論の順番は、「Why」→「How」→「What」です。
「Why(なぜするのか)」が最初に重要であり、その後に「How(どうやってするのか)」と「What(何をするのか)」の説明をするという流れです。
ゴールデンサークルの具体例は?
Appleの例では、製品自体の説明よりも「なぜ販売するのか」「Appleの考える未来」という「Why」の説明に重点を置くことで、顧客の共感を得て成功しました。
今回はゴールデンサークルについて解説しました。
ゴールデンサークル理論は、人の心を動かすために「Why」→「How」→「What」の順番が重要だという内容です。
「なぜするのか」を大切にしながら、マーケティングや他の活動にも応用し、人の心をつかむような発信を実践してみましょう。
弊社、株式会社アイデアプラスはお客様が抱える課題を一緒に考え、クリエイティブの力で課題解決・目標達成に向けて伴走いたします。
マーケティングや人の心を動かす施策ができない!とお困りの際は、ぜひ株式会社アイデアプラスにお気軽にご相談ください。
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中村 春奈
ディレクター
愛知県出身。新卒で損害保険会社に入社しリテール営業部で2年間勤務。
アイデアプラスに入社後は中小企業向けのリブランディングや周年イベントのプロデュースに関わる。
出張撮影のカメラマンとしても活動。名古屋の商店街活性化プロジェクト、地域活性を目指す社会実験に参加し、「まち」というコミュニティのデザインも勉強中。2023年10月まちづくりコーディネーター育成講座修了。