ファンマーケティングとは?
初心者でもすぐに始められる手法・コツを解説
ファンマーケティングと聞いて、単なる「ファンとの商売」という認識で、それ以上考えたことがない方もいるのではないでしょうか。
しかしファンマーケティングを深く見ていくと、ただの「商売」ではなく、新しいアイデアの発掘や企業の成長にもつながる重要な側面が浮かび上がってきます。
そこで今回は、ファンマーケティングの概要や必要性、初心者でもできるコツなどを解説します。
ファンマーケティングとは、商品やサービス・ブランドを熱烈に愛してくれるファンを増やし、売上を伸ばしていくマーケティング戦略のことです。
「ファン」に似た言葉に「リピーター」がありますが、リピーターは継続的に商品を買ってくれるものの、より安い商品が出れば簡単に他社に切り替えます。
一方でファンは、値段よりもその商品への愛着や信頼などがベースにあるため、安易に離れようとはしません。
そこで本記事では、「ファン」マーケティングに焦点を当てます。
かつてのマーケティング戦略は、テレビや新聞などのマスメディアで大衆に向けて広告を掲載し、顧客を獲得するというアプローチを取っていました。
しかし近年では、インターネットやスマホの普及により、よりターゲットを絞った広告でも対象に届きやすい時代になりました。
現在は、SNSやWebサイトの拡散により認知を拡大し、自社のファンを増やすファンマーケティングが注目を集めています。
ファンマーケティングが重要視される背景
ファンマーケティングが重要視される背景には、次のような例が挙げられます。
1.SNSが現代社会に浸透しているから
SNSが普及したことで、顧客はただモノを買うだけでなく、感想を発信できるようになりました。
また情報収集も簡単にでき、バズった商品は調べる気がなくても勝手に目に入ってくる状況です。
企業広告だけではなく、リアルタイムで生の声や拡散情報が飛び交うSNS時代が、ファンマーケティングを後押ししているのです。
2. 新規顧客の獲得が困難になってきたから
日本では少子高齢化が進んでおり、多くの市場が縮小しています。
中でも、本来は消費行動が活発であるはずの若年層の減少が著しいため、企業は新規顧客の獲得が困難になってきました。
そこで、少ない顧客でも「多く」「長く」購入してくれるファンの獲得が、マーケティング戦略上重要なのです。
3. CtoCコミュニケーションの影響が大きいから
各WebサービスやSNSの普及に伴い、CtoC(消費者同士)のコミュニケーションが簡単になりました。
あるユーザーが実際に購入した商品について感想を述べれば、別のユーザーがそれに返信したり、詳細を補足したりできます。
消費者同士のやり取りの中で、ネガティブな感想が多ければ、その商品はすぐに売れなくなるでしょう。
CtoCコミュニケーションが売上に直接影響するため、ポジティブな感想を発信してくれるファンを増やすことが、ビジネス成功の近道といえます。
4. ファンは情報を選び取るから
全世界のデジタルデータは、年々爆発的に増加しています。
スマホを開けばおすすめ商品が表示され、SNSでは面白い広告が出回っています。
このように情報が多すぎる状況では、自社商品やサービスを見つけてもらうのは至難の業です。
しかし、ファンであれば見逃しません。
応援しているブランドのSNSはフォローし、好きな商品やサービスは自発的に探してくれます。
情報過多な環境でも、必要な情報を選び取ってくれるファンを大切にするマーケティングが必要なのです。
ファンマーケティングを実施するメリットには何があるのでしょうか。
次の5つの点について、具体的に解説します。
・ファンの口コミにより信頼度が向上する
・安定した売上を期待できる
・製品・サービスのフィードバックを受けられる
・広告費が削減できる
・新規顧客の獲得につながる
ファンの口コミにより信頼度が向上する
商品やサービスのレビューを読んでから購入する人が多いため、口コミが多いと信頼度が向上します。
実際に、レビュー分析を得意とする米国のPowerReviewsの調査では、顧客の97%が「レビューを参考にして購入する」と回答しています。
つまり、ほとんどの顧客が口コミを見たいと思っているのです。
ファンが多ければ好意的な口コミが増え、好意的な口コミが増えると信頼が増します。
ファンの口コミを見て購入した顧客が、新たにファンになってくれるかもしれません。
さらには新規ファンの中からも、同じように口コミを書く人が出てくるでしょう。
以上のように、信頼度を上げながらファンの好循環を生むためにも、ファンマーケティングは重要な施策です。 出典:PowerReviews「PowerReviewsPowerReviews」
安定した売上を期待できる
ファンマーケティングを実施すると、安定した売上を期待できます。
「パレードの法則」(全体の80%の売上は、20%の顧客が生み出している)のように、少数の熱いファンが獲得できれば、売上の大部分を押さえたことになり、安定した売上を得られるのです。
また、LTVの向上も安定売上につながります。LTVとは、Life Time Value(ライフタイムバリュー)の略で、「自社が、顧客から生涯でどれだけの利益を得られるか」という指標のことです。
この指標が低ければ「リピーター少ない」という意味になります。
しかしファンは1度きりではなく、何度も自社商品を買ってくれます。
つまりLTVが高ければ、固定客による安定売上が期待できることを意味するのです。
製品・サービスのフィードバックを受けられる
製品やサービスのフィードバックを受けられるのも、ファンマーケティングを行うメリットです。
前提として、大多数の消費者は何も発信しません。嬉しければ次も購入し、不満があれば次は購入しないだけです。
つまり、企業側が消費者目線で具体的な改善点に気づく機会は限られています。
そこで企業は、本音を話してくれるファンと積極的にコミュニケーションを取り、得られたフィードバックをもとに製品を改善します。
この流れがファンとの信頼関係を生み、企業では気付けなかった点が改善でき、購買意欲の向上につながるのです。
ファンの声をもとに、新商品やサービスの開発につながることもあります。
企業の気づかなかった、または意図しなかった箇所に、ファンが価値を見出している場合があるのです。
ファンマーケティングのおかげで、ファンの意見を反映した人気の新商品ができるかもしれません。
広告費が削減できる
ファンマーケティングは、広告費の削減にもつながります。
自分の大好きな商品やサービスを「他の人にも知ってほしい」と思っているファンは多いものです。
その考えから自発的に宣伝してくれるファンもいます。
ファンの宣伝には「実体験」という根拠があるため訴求力が高く、SNSで拡散すれば、もはや非常に強大な広告です。
例えば、世界最大のコーヒーチェーン店・スターバックスは、魅力的な商品や空間を意識してデザインしています。
その結果、多くのファンがSNSに感想を投稿し、宣伝効果を生みました。テレビCMやチラシなどの広告費をほとんどかけずに、世界的な大企業に躍進したのです。
ファンの宣伝で企業のブランドイメージが確立されれば、結果として広告費削減につながります。
新規顧客の獲得につながる
多くの消費者は、企業が直接発信する情報よりも、ユーザーのクチコミに反応する傾向があります。
ファンの感想を見た人が「これは良さそう」と思えば、同じ商品の購入につながり、企業は新規顧客を獲得できます。
ファンマーケティングは消費者の購買意欲や行動に結びつくため、新規顧客の獲得につながるのです。
ファンを増やすための市場戦略には、多くの手法があります。 ファンマーケティングの手法
手法 |
詳細 |
ファンミーティング |
ファン同士やファンと企業が主に対面で交流するイベント |
サンプリング体験会 |
ファンのサンプリングを行い口コミを発信してもらう |
ファンコミュニティ |
ファン同士やファンと企業が主にオンライン上で交流するイベント |
メルマガ配信 |
企業からファンに向けて定期的にメールマガジンを配信 |
限定キャンペーン |
ファンを対象にプレゼントや特典を付与する販売促進などのキャンペーン |
商品デモンストレーション |
ファンを対象にライブ配信などでファンの反応を確認しながら行う商品のプレゼンテーション |
共創型商品開発 |
市場に出す前の商品(プロトタイプ)などにファンからの意見を収集・反映し開発 |
サブスクリプション型 サービス |
ファン限定の商品・サービスを月額などの定期課金により提供 |
いずれも、ファンが嬉しい・ファンが集まる・ファンが広がる施策です。
最適な手法は、商品やブランドによっても異なりますが、どれが自社の現状課題の解決に結びつきやすいかを熟慮して選択しましょう。
ファンマーケティングのメリットや手法を紹介してきましたが、いくつか注意点もあります。
実施の前に以下の内容を押さえ、自社に必要か判断できるようにしましょう。
・炎上のリスクがある
・ファンマーケティング成功までに時間がかかる
・顧客獲得に貪欲であり続ける必要がある
炎上のリスクがある
ファンにアプローチする戦略は、一般的なマーケティング手法と比べリスクを孕んでいます。
例えば、ファンとの密接な会話の中で、企業の機密や担当者の本音が漏れてしまった場合、どうなるでしょうか。
つい弾みで出た言葉が、顧客によってリークされれば、意図的でなかったとしても波紋を呼ぶ可能性があります。
企業が好んでアプローチしたい、SNSに強いファンほど、拡散力があることを忘れてはなりません。
企業側では予測できない情報が出回り、炎上するリスクがある点には注意しておきましょう。
ファンマーケティング成功までに時間がかかる
ファンマーケティングは、始めてすぐに利益が上がるものではありません。
むしろ時間がかかるほどストーリーが生まれ、顧客が共感し、応援してくれるファンが増える場合もあります。
成功までは歯がゆいかもしれませんが、それはある意味「参入障壁」とも見なせます。
同じような苦労期間を憂い、競合他社が参入をためらえば、ファンマーケティングに挑戦していること自体が自社の特長になるでしょう。
顧客獲得に貪欲であり続ける必要がある
ファンマーケティングに注力するあまり、新規顧客の獲得がおろそかになる可能性があります。
多くのファンを獲得すると売上が安定するため、獲得したファンのつなぎ留めに集中したくなります。それも重要ですが、企業の発展には新規顧客を増やす努力も続けるべきです。
既存のファンの方向ばかり向いていると、内向きな姿勢が企業の評価を下げ、新規顧客の感覚を得られずに商品の評価も下がりかねません。
顧客獲得に貪欲であり続け、新規顧客を開拓するような交流や商品改善、既存ファンに喜ばれるような施策を継続的に行う必要があります。
ここで、ファンマーケティング成功のコツを5つ紹介します。
コツを知っているかどうかで成功までのスピード感も変わってくるため、必ず確認しておきましょう。
・ファンの定義を明確にしておく
・ファンのニーズを理解する
・ファンと密にコミュニケーションを取る
・ファン同士でコミュニケーションを取れる環境を作る
・ファンをワクワクさせる企画を実施する
ファンの定義を明確にしておく
まずはファンの定義を明確にしておきます。
定義の仕方はそれぞれですが、企業の世界観や提供する価値に共感し、商品やサービスを好んで多く利用してくれる人々が該当します。
さらに、厳密にファンを定義するために使うのが「購買データ」と「感情データ」です。
実際に使ってくれた金額をもとにした購買データと、企業や商品への愛着度合いを数値化した感情データを用いれば、主観や感覚にとらわれずにファンの数をカウントできます。
つまりファンの定義によって、ファンを定量的に把握するのです。
ファンの数がわかれば、新商品の販売タイミングでどのようにファン数が推移したのかなど、様々なデータと照らし合わせてマーケティング戦略を練れるようになります。
ファンのニーズを理解する
ファンのニーズを理解し、それに応えられるよう努めましょう。
ニーズの理解はファンの心をつかみ、「ファンの気持ちに応えてくれる企業だ」という印象が広まれば新規顧客の獲得にもつながります。
ニーズを把握するには、定期的に商品・サービスの満足度調査を実施したり、新商品を出す際にモニターを募集したりすると良いでしょう。
ファンと密にコミュニケーションを取る
ファンとの密なコミュニケーションも欠かせません。
ファンと交流すれば、新商品のアイデアや既存商品の不満が企業に届きやすくなり、ファン側の企業への信頼感も増します。
近年はファンマーケティングを行う企業も多いため、差別化を図るためにコミュニケーションの取り方を工夫できないか考えてみましょう。
例えばSNSで感想を投稿している人に「いいね」したり、何気ないコメントに返信をしたりすれば、企業を身近に感じてもらえるかもしれません。
ファン同士でコミュニケーションを取れる環境を作る
ファン同士のコミュニティを作ることも、ファンマーケティングを成功させるコツです。
ファンが交流して楽しめるだけでなく、「この企業を一緒に応援している仲間がいる」という心理から、競合他社への乗り換えを予防する効果があります。
また、ファン同士のコミュニケーションならではの会話から、より斬新なアイデアが生まれる可能性もあります。
企業とファンの交流とは別で、ファン同士の交流の場を設けるよう心がけましょう。
ファンをワクワクさせる企画を実施する
ファンが期待し、ワクワクするような企画の実施も大切です。
どんなに熱狂的なファンでも気分には波があるため、長期的にファンでい続けてもらえるのは貴重なことです。
ファンの気持ちを離さないように楽しませ、次の企画が待ち遠しくなるような状態を保つ必要があります。
そこで、新規ファン獲得に向けたイベントとは別に、既存のファンに向けた企画を検討しましょう。
例えば、ファン限定グッズや非売品の提供、新商品のテスター募集などが挙げられます。
ファンマーケティングの実際の成功事例にはどのようなものがあるのでしょうか。
アイデアプラスでの事例を交えて、具体例として3つ挙げて解説しますので、参考にしてみてください。
・アイデアプラス
・スターバックス
・カゴメ
アイデアプラス
弊社、アイデアプラスが携わった長野ダイハツ販売様での事例を紹介します。
地域に根差したファンの獲得を目的に、また新店舗リニューアルオープンに伴うグランドオープンイベントの認知拡大を狙ったPR動画の制作とSNSでの広告運用を行いました。
PR動画は社員様が働く様子やお客さまの笑顔、地域貢献活動の様子を伝えるなど、より長野ダイハツ販売様のファンになってもらえるような構成を意識しました。
また、イベントLPへのリンクを設置して来場誘致を狙いました。
広告を出すエリアについても、長野県各地の店舗近隣地域に設定することで実際のイベント来場へと繋げていきます。
広告運用の結果としては、LPへのリンクのクリック率が高く、視聴者=地域のお客さまの興味関心が高いことが分析データから分かりました。
そこから、グランドオープンイベントで対面でのお客様との交流を通して、更なるファン化を促し、イベント成功へ繋げることができました。
スターバックス
スターバックスは、マスメディアの広告にはほとんど費用をかけていません。
SNSでの拡散を利用したファンマーケティングによって、ユーザーを増やし続けてきました。
各店舗は、ユーザーがSNSに感想を投稿したくなるような商品・空間になるようデザインされています。
実際に、ファンがSNSで商品や店舗の体験を自発的に紹介し、それが宣伝になりました。
1971年の創業以来、顧客体験に重点を置いたこの姿勢を続けた結果、世界最大のコーヒーチェーン店になったのです。
カゴメ
食品などの大手総合メーカーであるカゴメは、2015年にファン向けのコミュニティサイト「&KAGOME」を立ち上げました。
その前年に実施した顧客分析で、「売上金額の高い上位の2.5%の顧客が、売上全体の30%を占めている」と判明したため、ファンとのつながりをより大切にしようと開設されたのです。
会員登録は無料で、カゴメ社員や会員同士が自由に会話できる掲示板・商品レビュー・レシピ・カゴメからの情報が届く「カゴメ便り」など、豊富なコンテンツが用意されています。
カゴメのブランドに愛着を持ってもらうような工夫を続けた結果、2021年9月時点で4.9万人の会員を獲得し、会社としての成長にも大いに貢献しました。
ファンマーケティングに関連する、よくある質問にお答えします。
・リピーターとファンの違いは何?
・ファンベースマーケティングとファンマーケティングの違いは何?
リピーターとファンの違いは何?
リピーターは継続的に商品を買ってくれるものの、より安い商品が出れば簡単に他社に切り替えます。
しかしファンはリピーターと異なり、値段よりもその商品への愛着や信頼などがベースにあるため、安易に離れようとはしません。
ファンベースマーケティングとファンマーケティングの違いは何?
ファンベースマーケティングは「ファンの声をしっかり聞く」ことで、ファンの意見を反映した商品開発を心がける手法です。
一方でファンマーケティングは「ファンを増やしお金を使ってもらう」ことで、企業の売上を伸ばそうとする手法を指します。
つまり、ファンの声をもとにした商売か、ファンを対象にした商売か、という違いがあります。
今回は、ファンマーケティングの手法やコツについて解説しました。
SNS時代を背景に、ファンマーケティングは企業を成長させるうえで重要視されています。
ファンを増やせば顧客の信頼度向上や安定売上につながるため、ファンとの交流に工夫をこらしてファンマーケティングを成功させましょう。
弊社、株式会社アイデアプラスはお客様が抱える課題を一緒に考え、クリエイティブの力で課題解決・目標達成に向けて伴走いたします。
ファンマーケティングについてお困りの際は、ぜひ株式会社アイデアプラスにお気軽にご相談ください。
-
-
宮田 大樹
ディレクター
山口県出身。テレビ番組制作、音楽事務所、広告代理店などに20年勤務。
アイデアプラスに入社後は動画制作、SNS運用、SNS広告運用代行のディレクションや
コンセプト設計などを担当。