制作進行管理って何するの?
仕事内容と失敗しないスケジュール管理のコツを紹介
プロジェクトがスケジュール通りに進行しているかを管理するのが、「制作進行管理」の役割です。
しかし、「具体的にどんな仕事をしているのか」「ディレクターの仕事では?」「うまく進行する方法が知りたい」など、気になっている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、制作進行管理の仕事内容や必要性、失敗しない管理のコツを紹介します。
制作進行管理とは、プロジェクトのスケジュールと実際の進行具合を確認し、社内外の調整を行う役職のことです。
ビジネスにおいては、初期の計画では想定しなかった仕事の遅延・人件費の増加・緊急対応などの要因で、日を追うごとにスケジュールと進捗がズレ込む場合があります。
その際には、計画の見直しや関係者との業務調整が必要です。
制作進行管理は、適切な対応によってスムーズに進行し、遅滞なくプロジェクトを達成に導くために、とても重要な役職といえるでしょう。
ディレクターとの違い
制作進行管理とディレクターの違いは次のとおりです。
制作進行管理とディレクターの違い
役職 |
特徴 |
制作進行管理 |
ディレクション業務のうちスケジュール管理を担当 |
ディレクター |
ディレクション業務を担当 |
ディレクション業務とは、コンセプト設計・企画・編集・進行管理など、プロジェクト全般を指揮する仕事のことです。ディレクターがそのディレクション業務を担当しているのに対し、制作進行管理はそのうちのスケジュール管理を担当しています。つまり制作進行管理の仕事は限定的で、ディレクターの仕事は幅広いという違いがあります。
制作進行管理の主な仕事内容を5つ挙げ、それぞれ解説します。
・スケジュール作成
・制作物のクオリティチェック
・連絡調整
・工数管理
・タスク管理
スケジュール作成
最初の仕事はスケジュールの作成です。
まずはプロジェクト内容と納期を確認し、制作にどのような作業が必要か、作業にどのくらい時間がかかるかを確認します。
次に日程・工程を示したスケジュールを作成し、制作スタッフごとに割り振ります。
プロジェクトが始まる前に、制作進行管理がスケジュールを作り「いつまでに誰が何をすれば良いか」を明らかにしておくのです。
これにより数多くのスタッフの統率がとれ、効率良くプロジェクトを進行できます。
制作物のクオリティチェック
制作物のクオリティもチェックしましょう。
各工程ごとに仕上がる制作物と、クライアントの意向に差がないかを確認し、必要に応じて修正を依頼します。
適時適切なチェックを怠ってしまうと、後々クオリティに大きな差が出てしまったり、大幅な修正により納期に間に合わなくなったりする可能性が生じます。
理想のスケジュールで理想の制作物を提供するためにも、制作進行管理のクオリティチェックは重要な業務です。
連絡調整
プロジェクト関係者・各スタッフとの連絡調整も業務のひとつです。
こまめにスタッフと連絡を取り、進捗状況の共有と、トラブルの発生がないかなどを確認します。
もしトラブルが発生した場合は、制作への悪影響を最小限に抑えるため、速やかに関係各所へ連絡し、必要な調整を行いましょう。
制作進行管理はスケジュールを管理しており、全体の流れを理解しているため、最新の状況把握や突発事項の周知を行う担当者として適任だといえます。
工数管理
プロジェクトに必要な時間・人員を管理する「工数管理」も重要な業務です。
制作進行管理として滞りのないスケジュールを維持するため、工程のムダや余剰人員がいないかを確認します。
工数管理で生産性を向上させ、作業時間や人員を適正に割り振るのです。
大規模なプロジェクトでは作業量が多く、工数管理も膨大です。
工数管理ツールを用いるなど工夫して、各作業をまとめて管理できるようにしておきましょう。
タスク管理
タスク管理も欠かさず行います。
各スタッフの進捗状況を見ながら、タスクが遅れている場合は原因の把握と改善を求めましょう。
制作進行管理により、可能な限り多くのタスクがオンスケジュールになるよう調整するのです。
全てのタスク管理が難しい場合は、通知の来るタスク管理ツールの利用をおすすめします。
もし制作進行管理がいなかったら、現場でどのようなことが起こるでしょうか?
具体例を挙げながら、制作進行管理の必要性について解説します。
・納期に間に合わなくなる
・優先事項がわからなくなる
・クライアントからの評価が下がる
納期に間に合わなくなる
全体のスケジュールを管理する人がいないため、納期に間に合わなくなる可能性があります。
例えば、スタッフ間で統一されたスケジュールが共有されないため、進行具合がバラバラになります。
また、アクシデントが起きても連絡調整をしてくれる人はいません。
定期的な制作物のクオリティチェックがなければ、納期直近になってクライアントに拒否されるかもしれません。
そこで修正を急いでも、工数やタスクの管理者がいないため生産性は低いままです。
結果として、納期には間に合わないでしょう。
優先事項がわからなくなる
スタッフは、仕事の優先事項がわからなくなります。
管理者不在では何から手をつけて良いのかわからず、作業効率も悪くなるでしょう。
一方で、制作進行管理がいれば「今のタスクがこの段階だから、あと半日で終わらせて、次は優先度の高いそれを処理しよう」というように、各自が優先事項とスケジュールを把握して仕事に取り組めるのです。
クライアントからの評価が下がる
約束通りに仕事ができなければ、「あの会社に頼むと遅延する」という印象を持たれてしまい、当然クライアントからの評価は下がります。
それだけでなく、仮にクライアントが、納期までに成果物を受け取る前提で次のスケジュールを組んでいたらどうでしょうか。
クライアント側のスケジュール変更だけでなく、次の仕事の契約変更や別のコストが生じる可能性さえあります。
スケジュール管理ができないと会社の信用問題にもかかわるため、制作進行管理は必要不可欠な存在なのです。
スケジュールを作成する際には、どのような流れで、何をすべきでしょうか。
4つのステップに分けて、注意点やコツと併せて解説します。
STEP1:プロジェクトのゴールを決める
STEP2:必要なタスクを全て洗い出す
STEP3:タスクごとに必要な工数を計算する
STEP4:不測の事態が起きても対応できるように調整する
STEP1
プロジェクトのゴールを決める
まずはプロジェクトのゴールを設定します。
ゴールとは、納期や締め切り・公開日などのことです。
自社でゴールを決められる場合は、作業量やスタッフ数などを考慮して、余裕を持った日程にします。
クライアントの希望するスケジュールがある場合も、自社のリソースに鑑みて現実的なゴール設定になるよう調整しましょう。
STEP2
必要なタスクを全て洗い出す
次に必要なタスクを全て洗い出し、担当者を選定します。
主要業務から小さな作業まで、想定し得るあらゆるタスクを挙げておくと良いでしょう。
各スタッフの能力に応じ、適材適所でタスクを割り振ることが、プロジェクトを円滑に進めるコツです。
STEP3
タスクごとに必要な工数を計算する
タスクごとに所要時間・必要人数から工数を計算し、スケジュールをまとめます。
STEP2の想定から漏れていたタスクが見つかった場合は、作業が遅れる可能性があるため、プロジェクト後半のスケジュールはゆとりを持って設定しておきましょう。
STEP4
不測の事態が起きても対応できるように調整する
作業スタッフの欠員や、クライアントからの急な要求など、不測の事態が起きた場合に対応できるような調整も大切な仕事です。
突発的なトラブルが起きても納期に間に合うよう、スケジュールを確保しておくと良いでしょう。
ここで、スケジュール管理のコツを3つ紹介します。
制作進行管理で失敗しないため、参考にしてみてください。
・作業者とこまめにコミュニケーションを取る
・作業は必ず「見える化」する
・レスポンスは迅速に行う
作業者とこまめにコミュニケーションを取る
作業者とのこまめなコミュニケーションを欠かさず取りましょう。
例えばクライアントとの事前の擦り合わせで、「この分量の記事は何日で書けますか?」という相談があり、Webディレクターが独断で「1日で充分です!」と答えたとします。
そのまま契約が成立し、社内のライターに仕事を指示したところ「この分量は3日かかりますよ……」と返答される、なんてこともあり得るわけです。
このように、タスクの所要時間をディレクターが独断で決めてしまうと、スケジュールにズレが生じる可能性があります。
作業者とのこまめな対話・各人のスキルや仕事内容などの把握が肝心です。
作業は必ず「見える化」する
進捗確認の可視化も、失敗しないためのコツです。
各タスクやスタッフごとの進捗を「%」で表示し、毎日確認する習慣をつけると良いでしょう。
ただし「%」の増え方が恣意的なものにならないよう、あらかじめ基準を設けておきます。
視覚的に理解しやすいガントチャートなどを用いて、関係者全員が見られるスケジュールを作成すると便利です。
作業は必ず「見える化」し、常に遅れがないか把握できるようにしておきましょう。
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レスポンスは迅速に行う
もし届いたメールの確認を後回しにしていたら、後々開いたときに「期限は今日」なんてこともあります。
メール自体は読んでいても、返信を後回しにしていたら「気づいたときには内容を忘れてしまった」というのもよくある話です。
プロジェクトをスムーズかつ確実に進めるために、迅速なレスポンスを心がけましょう。
ここでは、弊社が携わったK株式会社の「ECサイト運営代行」事例をご紹介いたします。
K社が抱える課題は「自社ECサイト運営のマニュアルがなく、人に依存してしまっていて、業務効率化ができていないこと」でした。
プロジェクトの進め方としては、まずディレクターが目的・課題・予算・納期などを元に企画を固めてチームビルディングし、続いて制作進行管理担当者が企画実現に向けてスケジュール作成し、各担当者に割り振っていくような流れです。
今回のケースは、「弊社がEC運営代行しながら効率化できるポイントを洗い出し、適宜マニュアル化していく」といったような中長期的な取り組みだったので、最初の1ヵ月程度は制作物の確認にも注力し、制作チームがクライアントの意向を汲み取れているかなどの認識すり合わせに時間を費やしました。
スケジュール通りにプロジェクトを進めていくには、プロジェクトメンバーの統率をとることが非常に重要です。
これが結果として、様々な時短に繋がります。
とはいえスケジュール通りに進まないことも多く、適宜イレギュラーなことに対応しながら全体のタスクマネージメントをこなしていく必要がありました。
実際に今回のケースでは、1ヵ月毎にマニュアル作成の進捗報告をし、状況に応じて調整しながら進めていくような体制だったため、イレギュラーなことの方が多かったです。
プロジェクト進行において、スケジュール管理・タスクマネージメントなど制作進行管理者が担う業務の影響力はとても大きいです。
プロジェクトメンバー全員のスケジュールを「共有ガントチャート」で可視化したことも、プロジェクトを円滑に進められた要因のひとつでした。
制作管理担当者が常に状況を把握し、プロジェクトに関わる全ての人に迅速かつ的確に共有することで、チーム全体が指針を失わずに進んでいけるよう心がけましょう。
制作進行管理についてお困りの際は、株式会社アイデアプラスにご相談ください。
ここからは、制作進行管理に必要な素質について解説します。
・スケジュール管理能力
・コミュニケーション能力
・リスク管理能力
・強い責任感
・課題解決力
スケジュール管理能力
制作進行管理には、スケジュール管理能力が必須です。
これがなければ、仕事が成り立ちません。
クライアントの要望に答えながらも、自社スタッフに対しては無理のない仕事を割り振らなければなりません。
つまり、クライアントにもスタッフにも納得してもらえるスケジュール管理を行う必要があります。
また、プロジェクトの作業内容を細かく把握し、納期に合わせた適切なスケジューリングができるスキルも欠かせません。
クライアントとスタッフの顔色を伺うばかりではなく、生産性を落とさずにプロジェクトを達成できるように、最適な期間を算出しましょう。
コミュニケーション能力
コミュニケーションが好き・得意という人は、制作進行管理の仕事に向いています。
制作進行管理はクライアントや自社の各部署など、様々な人の間に立って仕事をするため、コミュニケーション能力が必須です。
また、一方的に情報を伝えられれば良いのではなく、「どうすれば相手に伝わりやすいか」「双方にとって心地良いコミュニケーションとは何か」を常に考えて行動できるかどうかも重要な素質といえます。
リスク管理能力
リスク管理能力の有無も、制作進行管理の素養にかかわります。
リスク管理自体は、プロデューサーやディレクターが担う場合も往々にしてあります。
しかし、制作進行管理としてもリスク管理を意識した働きをするのが望ましいでしょう。
コミュニケーションの中で誤解を生まないよう丁寧に説明する必要があるだけでなく、制作物のクオリティがクライアントの意向に沿っているかを確認する際にも、様々なリスクを想定しておくべきです。
工数やタスク管理を行う際に労務上のリスクが発生したり、連絡調整で突発的なリスクに気づいたりする場合もあります。
以上のように、常にリスクがないかアンテナを張っておけば、些細なミスやズレに反応しやすくなるだけでなく、万が一のトラブルにも対応しやすくなります。
強い責任感
強い責任感も必要な素質です。
制作進行管理はプロジェクト全体を支える仕事なため、日々責任感を持って臨みましょう。
スケジュール管理を怠ると、現場スタッフだけでなくクライアントにも影響を及ぼす恐れがあります。
各作業を自分ごととして捉え、広い視野で使命感を持って働ける人ほど、この仕事に求められる人材です。
課題解決力
制作進行管理を担当するには、高い課題解決力が必要です。
プロジェクトでは、膨大なタスクが同時進行で動き続けます。
その中で発生する課題を解決するためには、あらゆる立場の人と、多種多様な対応をしなければなりません。
当然予定通りにいかない場合もあり、その際にはボトルネックを見つけ出すことが重要です。
そこから解決策を検討し、関係者と連携しながら、自ら実行していく能力が必要なのです。
制作進行管理について、よくある質問3つに回答していきます。
・制作進行管理とはどのような仕事?
・制作進行管理に向いているのはどのような人か?
・制作進行の平均年収はいくら?
制作進行管理とはどのような仕事?
制作進行管理とは、プロジェクトのスケジュールと実際の進行具合を確認し、社内外の調整を行う役職のことです。
制作進行管理に向いているのはどのような人か?
制作進行管理には、クライアントにもスタッフにも納得してもらえるスケジュール管理能力のある人が向いています。
また、高いコミュニケーション能力・リスク管理能力・強い責任感・課題解決力も求められます。
制作進行の平均年収はいくら?
Webプロデューサー・Webディレクターの平均年収は約443万円です。
年代別では20代が390万円、30代は478万円、40代以上は542万円です。
出典:マイナビクリエイター「Webディレクターとして年収をアップさせるための3つの能力と3つのキャリアパス」
今回は制作進行管理の仕事内容や、スケジュール管理のコツについて解説しました。
制作進行管理は、プロジェクトのスケジュール管理や社内外の調整を行う役職として、重要な存在です。
工数やタスク管理も業務のうちで、制作進行管理がいなければプロジェクト全体が立ち行かなくなります。
失敗しないためのコツとして、こまめなコミュニケーション・作業の見える化・早いレスポンス、を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
弊社、株式会社アイデアプラスはお客様が抱える課題を一緒に考え、クリエイティブの力で課題解決・目標達成に向けて伴走いたします。
プロジェクトの進行管理にお困りの際は、ぜひ株式会社アイデアプラスにお気軽にご相談ください。
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木村 里紀
ディレクター
神奈川県出身。美術大学卒業後、映画/ドラマ/アニメのオフライン編集を行う映像編集会社に編集助手として従事。次回予告編集を始めとする映像作品作り携わる。その後、ディレクターとしてアイデアプラスに入社。ポスター、チラシ、LP、バナーなど複数展開のキャンペーン販促物を中心にディレクションを担当。