セグメンテーションとターゲティングの違い・実践方法をわかりやすく解説
セグメンテーションとターゲティングは、マーケティングに欠かせない知識です。
これらを理解せずにマーケティングを始めてしまうと、成功から遠のくばかりか、最悪の場合大きな損害を招く可能性があります。
しかし、十分に理解できていない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、セグメンテーションとターゲティングの違い・重要性の解説をはじめ、マーケティングに成功した企業の実例も紹介します。
セグメンテーションもターゲティングも顧客市場の分析方法として使用される手法のひとつですが、明確に役割が違います。
セグメンテーションとは、不特定多数の顧客を年齢や性別、居住地など、特定の属性ごとに細分化し分類することをいいます。
例えばアパレル市場であれば「男性用」「女性用」「子ども用」などといった顧客層の細分化のことです。
セグメンテーションで細分化した後に、どのグループ(セグメント)を企業として狙っていくべきか決めるプロセスがターゲティングです。
例えば細分化されたセグメントの中から「今回は子ども用のセグメントに焦点を当てよう。」といった形で決めることです。
どちらか一方を行っても分析が成り立たないため、次に解説するポジショニングを含め、必ずセットで実践しましょう。
ポジショニングとの関係
ポジショニングとは、ターゲティングに定めたセグメントに対して、競合他社と差別化し、位置関係を明確にするSTP分析のひとつです。
工程としてはターゲティングの後に実践します。
実践方法は以下のとおりです。
ポジショニングの実践方法
・市場の理解
・競合のポジションの理解
・ユニークな販売提案(USP)の開発
・製品が市場内でどのように認識されるべきかの策定
・戦略の実施
・フィードバックと調整
セグメンテーションやターゲティング、そしてポジショニングのすべてを実践してはじめてマーケティング戦略が成立します。
市場において競合他社より優位性を保つためにも、ポジショニングを正しく設定しましょう。
STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)とTargeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3つのステップからなるマーケティング戦略です。
各頭文字を取って、STPと呼ばれています。
具体的にSTP分析は、以下の流れで進めます。
1.セグメンテーションで細分化
2.ターゲティングで狙うべき市場を定める
3.ポジショニングで競合他社と差別化を図る
これらステップの一部が、本記事で解説するセグメンテーションとターゲティングであり、マーケティングを行ううえでは必要不可欠な要素となってきます。
セグメンテーション・ターゲティングが重視される理由
STP分析の中でもセグメンテーションとターゲティングが重視される理由については、以下が考えられます。
・最小限の費用で最大限の効果を生み出すため
・多様な訴求方法から最適なものを選ぶため
・ニーズが多様化しているため
・IT技術が進歩しているため
最小限の費用で最大限の効果を生み出すため
セグメンテーションとターゲティングを実践することで、費用を抑えながらも最大限の効果が期待できます。
データ分析にネット検索を活用すれば、無料で容易にデータを取得できるためです。
また「調査する時間がない」「もっと細かいデータが欲しい」といった場合には、調査会社に依頼するのも良いでしょう。
費用は調査方法にもよりますが、最低数万円から可能で、自社が必要としているデータのみをピックアップしてくれます。
時間や手間が省け費用対効果も高く、即座に投資回収が可能になるといえるでしょう。
データ取得にお金をかけなくとも、正しく実践することで最大の効果を生み出せる可能性があるため、セグメンテーションとターゲティングは重要であるといえます。
多様な訴求方法から最適なものを選ぶため
セグメンテーションで細かく分類されたさまざまな要素(セグメント)の中から、いかに自社にとって最適なものを選択できるか、によって施策は大きく左右されます。
例えば腕時計販売店でも、取り扱う商品を高級ブランドにするか、通勤や通学・レジャーに使う実用性の高いものにするかで、顧客への訴求方法が変わることが理解できるでしょう。
このように自社の経営理念やニーズに合ったセグメントを選ぶためにも、セグメンテーションとターゲティングは重要です。
ニーズが多様化しているため
セグメンテーションとターゲティングが重要視される理由に、ニーズの多様化があります。
従来はターゲットを特定しない「マスマーケティング」が主流でしたが、現代の成熟した市場では「作れば売れる」といったマーケティングは通用せず、消費者が多種多様になっています。
そのためセグメンテーションとターゲティングを正しく行わなければ、市場で優位性を保つことが難しくなっているのです。
IT技術が進歩しているため
急速にIT技術が進んだことによって、セグメンテーションとターゲティングの重要性がより増しています。
現代ではインターネットの普及が著しく、X(旧Twitter)やFacebookといったSNSにおいて容易に情報が得られるようになりました。
そのため、細分化したセグメントごとに最適なアプローチを行う必要があり、高度なマーケティングを行わない限り、成果を出すことが難しくなっています。
セグメンテーションを行う際は、市場や顧客を分類する基準を把握しておく必要があります。
基準は全部で4つです。
・人口動態変数
・地理的変数
・心理的変数
・行動変数
人口動態変数
人口動態変数とは、年齢・性別・家族構成・年収など、人口統計分布に基づき分類する方法を指します。
例えばスポーツジムで集客を狙いたい場合、男性なら筋肉をつけたいと考える人が多い一方で、女性ではダイエット目的の人が多いと推測できるでしょう。
以上のように、それぞれのニーズを正確に捉えるため、人口動態変数によってマーケティングを行うことは非常に重要です。
人口動態変数の調査は多くの企業や機関が実施しており、比較的データ取得が容易なため、マーケティングを実施する多くの企業で活用されています。
地理的変数
地理的変数は、国・市町村・気候・人口密度など、地理的な違いによって分類する方法です。
例えば、都市部や郊外といった分け方も地理的変数のひとつです。
住む場所によってライフスタイルが異なるため、ターゲティングしたいセグメントにあった方法で行うことが一般的です。
ただしネットショッピングが普及した現在では、地理的変数は昔ほど重要視されなくなりました。
これからは主軸がネットショッピングなのか実店舗なのかによって、地理的変数を使い分ける必要があるでしょう。
心理的変数
心理的変数とは、商品やサービスの使い方・利用頻度・価値観などを指す基準です。
車の所持理由を考えてみても、休日のレジャーのため、通勤のため、高級車に乗りたいからなど、理由はさまざまです。
心理的要因はユーザーによって多種多様であるため、他の方法に比べて大きくカテゴライズしにくく、顧客の細分化が難しい基準といえます。
しかしターゲットを絞り込んで確実にアプローチを行えば、競合他社より優位に立ちやすい方法でもあります。
顧客の心理はニーズの変化によっても左右されやすいため、企業が経営を持続していくためには行動と検証を繰り返す必要があるでしょう。
行動変数
行動変数は、商品購入に至るまでのユーザーの行動パターンを分類する方法を指します。
具体的には購買履歴・使用頻度・購買パターンなどです。
例えば、日用品のように購入頻度が高いものは、チラシを毎週配布するのが有効かもしれません。
一方で、車や宝飾品などの高価な商品に関するチラシを毎週配るのは効果的ではないでしょう。
以上のような判断を明確にできるようにするのが行動変数です。
現代では顧客の行動履歴を把握しやすくなったことから、行動変数の重要性はますます増加しています。
「数あるセグメンテーションの中からどれを選ぶべきか分からない」そういったお悩みも多いかと思います。
セグメンテーションを選ぶ際は、下表の評価視点を参考に選択すると良いでしょう。
セグメンテーション4つの評価指標
語句 |
意味 |
優先順位(Rank) |
自社の事業戦略とセグメントを照らし合わせながら、重要度に応じて順位付けをする |
規模の有効性(Realistic) |
セグメントが十分な市場規模や収益可能性があるかどうかを検討する |
到達可能性(Reach) |
セグメントに対して商品やサービスを届ける難易度や実現可能かを検討する |
測定可能性(Response) |
商品やサービスがユーザーに届き、セグメントの反応を測定・分析が可能でであるかどうか |
以上の4つすべてを評価し判断しましょう。「1つでも突出している要素があればいい」というわけでもありません。バランスを欠いた戦略はビジネスにおいては避けるべきといえます。例えば市場規模(規模の有効性)が大きく収益の見込みがあっても、商品やサービスが提供できない(測定可能性)のではビジネスとして成り立ちません。そのため、必ず4つすべてを総合的に判断したうえでセグメントを決めましょう。
セグメンテーション後はターゲティングを実施しますが、その際に用いられる基準が「6Rの原則」です。
それぞれの意味や違いについて下表にまとめました。
6Rの原則
語句 |
意味 |
Realistic(有効規模) |
ビジネスに合った市場規模の大きさか。 大きすぎると参入企業が多く優位性を保ちにくいが、小さいと収益が見込みにくい。 |
Rate(成長性) |
将来を見越して成長が期待できる市場か。 Realistic(有効規模)やRival(競合状況)と比較して設定する。 |
Rival(競合状況) |
競合他社の数はどうか。 多いと競争率が激しく優位性を保つことが難しい。 地理的変数も考慮したうえで設定することが望ましいといえる。 |
Reach(到達可能性) |
ターゲットに的確なアプローチができるかどうか。 広告や情報などがターゲット層に届けられるかどうか。 |
Rank(優先順位) |
ユーザーにとって優先度はどうか。 優先度が高い商品やサービスだとアプローチした場合、自社を発見してもらいやすくなる。 |
Response(測定可能性) |
商品やサービスに対する反応の測定が可能か。 測定が難しい場合、効果検証ができず施策を打てない可能性が高い。 |
これらの原則を活用し、セグメンテーションと同様に絞り込んだうえで最終的にターゲティングを決めましょう。
ターゲティングを実施する際の注意点が2つあります。
1つはターゲットを「すべての人」にしないことと、もう1つは年齢・性別のみで設定しないことです。
このどちらか一方でも行ってしまうと、市場で優位に立つことが難しくなってしまうでしょう。
そのようにならないためにも詳しく解説していきます。
ターゲットを「すべての人」にしない
ターゲットはすべての人に設定しないように注意しましょう。
なぜならユーザー層が広すぎると社内共有が難しく、まとまりのない商品やサービスが出来上がってしまう可能性があるからです。
ターゲットはできるだけ細かく設定し、具体的なユーザー像に向けて商品やサービス開発できるようにしましょう。
年齢・性別のみで設定しない
ターゲットを年齢・性別のみで設定してしまうと、想定したユーザーに響きにくい商品やサービスになってしまう可能性があります。
なぜなら、ユーザーのライフスタイルや価値観などの付加要素によって、ニーズが大きく変わるからです。
例えば、30代男性が車の購入を考えているケースについて考えてみましょう。
家族がいる場合はファミリーカーを求める層が多く、未婚であれば軽自動車が好まれるかもしれません。
他にも、車好きならスポーツカーの購入を検討している、など「30代男性」の中にもさまざまな人がいます。
以上のように年齢や性別だけでは把握できない要素が含まれるため、居住地や心理、行動要素などを組み合わせてターゲティングしましょう。
セグメンテーションとターゲティングに成功した実際の企業には、以下が挙げられます。
・アイデアプラス
・無印良品
・ライフネット生命
・ロイヤルブルーティー
これらの企業は競合他社とどのような点で違いを見いだしたのか、弊社アイデアプラスでの事例を交えて詳しく解説します。
アイデアプラス
まずは、弊社が携わった金融機関T社の「年金振込口座開設数の増加」を目的としたPR事例をご紹介いたします。T社は創業から90年以上の歴史がある、地域に根ざした金融機関です。
セグメントは「T社近郊に住む40代後半〜60代前半の男女」とし、その中でも「既にT社で別口座を持っている層」をターゲティングしました。
セグメント設定の背景として、今回は対象が「年金振込口座開設」に限定されていたことから、年金受給について意識し始める層を「40代後半-60代前半の男女」と想定し、さらにT社の「地域に根ざす」特性を活かして居住地を条件に入れました。
ターゲットを「T社の既存顧客」に限定した理由は、完全な新規に比べて口座開設のハードルが低いという点を重視したからです。
ターゲットを絞り込むことで対象範囲を狭めたとしても、最適な施策を打てば結果的に見込める期待値は高くなると判断しました。
施策では、あえてチラシ・サイネージ・駅貼り・新聞広告などのアナログ手法を活用し、地域に根づく「安心感」「親しみやすさ」を演出しました。
目的が明確であったこと、セグメントとターゲットの条件を惜しみなく絞り込んだことが功を奏し、結果として狙い通りの誘致を達成することができました。
マーケティングについてお困りの際は、株式会社アイデアプラスにご相談ください。
無印良品
1980年に生まれた無印良品は衣服や生活雑貨、食品といった数多くの商品を取りそろえた製造小売店です。
バブル期で高額商品の人気が出ている中、無印良品は「高額商品ではなく価格を抑えた市場」をセグメントとし、「シンプルなデザインを好むユーザー層」にターゲティングしました。
発足当初は品質が良くないといった声もあり、苦戦を強いられていましたが、その後工程や素材、包装を必要最低限のものに見直しコスト削減に取り組んだ結果、売上が向上。
見事にマーケティングに成功したのです。
ライフネット生命
ライフネット生命は、2008年に創業したインターネット専用の保険会社です。
セグメントに「若年層や子育て世代」を置き「将来的に家族を持ちたいが、高額な保険料は負担できない若年層」をターゲットとしました。
しかし、保険料を下げると経営が赤字になることは明白であったため「若い世代はインターネットに対するリテラシーは高いはず」との推測から、他の保険会社との違いを作り出しました。
実店舗を持たずにすべての手続きをWeb経由で行うこととしたのです。
結果、保険料と人件費のコスト削減に成功し、国内初のインターネット専用保険会社としてブランドを確立しました。
ロイヤルブルーティー
ロイヤルブルーティーはワインボトル入りの高級茶ブランドです。
経営理念は「本物のお茶を伝える」で、高いもので数十万円のお茶を提供しています。
ロイヤルブルーティーはセグメントとして「ぜいたくな時間」「特別な日や特別な人との食事」を置き、ターゲティングでは、収入水準の他に「一食当たりの支出額」「食事の同席者」といった要因も考慮しました。
戦略として高級レストランやバーなどにお茶を置いたところ、お酒を飲まない人にも違和感なく手に取ってもらえ「同席者と同じ雰囲気で楽しめる」と人気に。
「高級茶ブランドといえばロイヤルブルーティー」と言われるほどになり、見事マーケティングに成功しました。
セグメンテーションとターゲティングについてよくある質問にお答えします。
・セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの違いは何か?
・セグメンテーションの目的は何か?
・セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの順番はあるか?
セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの違いは何か?
セグメンテーションやターゲティング、ポジショニングは3つのステップからなるマーケティング戦略のひとつです。
それぞれの頭文字を取って「STP分析」と呼び、セグメンテーションは市場を細分化し、ターゲティングは市場を選択、ポジショニングは自社の立ち位置を明確にします。
セグメンテーションの目的は何か?
セグメンテーションは不特定多数の顧客を細分化し、自社の商品やサービスがどのセグメントに合うかを見極めるために行います。
セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの順番はあるか?
セグメンテーション(市場を細分化)→ターゲティング(市場を選択)→ポジショニング(自社の立ち位置の明確化)の順番で行います。
STP分析の頭文字の順番通りと考えると覚えやすいです。
今回は、セグメンテーションとターゲティングについて解説しました。
これらはマーケティングを行う上で欠かせない戦略です。
正しく実践すれば、商品やサービスの売上につながるでしょう。
競合他社に負けない企業となるためにもセグメントとターゲティングを理解し、取り組んでみてください。
弊社、株式会社アイデアプラスはお客様が抱える課題を一緒に考え、クリエイティブの力で課題解決・目標達成に向けて伴走いたします。
セグメンテーションやターゲティングなど、マーケティングについてお困りの際は、ぜひ株式会社アイデアプラスにお気軽にご相談ください。
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関 裕生
ディレクター
愛知県出身。人材業界に5年在籍し人材派遣やRPOの業務設計に従事。
アイデアプラスに入社後はパンフレットなどの販促物のディレクションやイベントコンセプト設計、
新規事業開発を担当。