PDCAとは?成功例と失敗例から学ぶサイクルの効率的な回し方
PDCA(Plan-Do-Check-Act)は、絶えず改善と効率化を追求するためのサイクルプロセスであり、成功と失敗から学ぶ重要な手法です。
このコラムでは、PDCAサイクルの効率的な運用方法を探求し、成功事例と失敗事例から学ぶことを重要視しています。PDCAを最大限に活用し、プランニング、実行、評価、改善の各段階でのベストプラクティスを提供し、ビジネスやプロジェクトの成功を促進する方法を探求します。
成功と失敗からの貴重な洞察を通じて、PDCAの実践を向上させ、持続的な成長と効率化を実現しましょう。
PDCAとは、品質管理や業務改善などに用いられるサイクルのことです。PDCAは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとったものです。
Plan:計画を立てる
Do:実行する
Check:評価する
Action:改善する
Plan:計画を立てる
「Plan:計画する」は、PDCAサイクルの最初のステップであり、目標や目的を明確にし、それに沿った方法や手順を考える段階です。計画することで、目標や目的に沿った実行や評価や改善ができるようになります。計画は、明確で具体的であるべきです。計画を立てる際には、目標や目的を設定したり、現状や問題点を分析したり、仮説やアイデアを立てたり、方法や手順を決めたりすることが必要です。
計画する際には、以下の ポイントを抑えましょう。
目標や目的を設定する
何のために何を目指すのかを明確にします。目標や目的は、SMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)という基準に沿って具体的かつ達成可能なものにします。例えば、「売上を上げる」という目標はあまりにも抽象的ですが、「来月までに売上を10%増加させる」という目標はSMARTに沿っています。
現状や問題点を分析する
目標や目的と現状とのギャップや問題点を特定します。現状や問題点を分析する方法としては、5W1H(Who, What, When, Where, Why, How)や、それに2つの「H」(How Many, How Much )を加えた5W3H、5つのなぜ(Why-Why Analysis)などがあります。例えば、「売上が減少している」という現状に対して、「誰が」「何を」「いつ」「どこで」「なぜ」「どのように」行っているのかを調べたり、「売上が減少している理由は何か」という問いに対して、「なぜ」という問いを繰り返して根本原因を探ったりします。問題や課題を論理的に分解して整理し、解決策や思考の流れを可視化するために「ロジックツリー」を使用するのもいいでしょう。
仮説やアイデアを立てる
現状や問題点を分析した結果から、目標や目的を達成するための仮説やアイデアを立てます。仮説やアイデアは、論理的かつ創造的なものにします。仮説やアイデアを立てる方法としては、ブレーンストーミングやKJ法などがあります。例えば、「売上を10%増加させるためには、新規顧客の獲得と既存顧客のリピート率の向上が必要だ」という仮説を立てたり、「新規顧客の獲得と既存顧客のリピート率の向上のためには、どんな施策が有効だろうか」という問いに対して、メンバーでアイデアを出し合ったりします。
方法や手順を決める
仮説やアイデアから、最も効果的なものを選択し、それらを実行するための方法や手順を決めます。方法や手順は、再現可能かつ評価可能なものにします。方法や手順を決める方法としては、PDCAシートやGanttチャートなどがあります。例えば、「新規顧客の獲得のためには、SNSでキャンペーンを実施する」という方法と、「既存顧客のリピート率の向上のためには、ポイントカード制度を導入する」という方法を選択し、「どちらも来月までに実施する」という手順を決めたり、「SNSでキャンペーンを実施する場合は、どのSNSを使うか、どんな内容にするか、どのくらいの予算をかけるか、どのように効果を測定するか」などを具体的に記入したりします。
スケジュールやリソースは余裕を持って見積もり、必要に応じて調整しましょう。
Do:実行する
「Do:実行する」は、PDCAサイクルの2番目のステップであり、計画に基づいて、実際に行動する段階です。実行することで、計画の妥当性や効果を検証することができます。実行する際には、以下のようなことを行います。
計画通りに進める
計画した方法や手順に従って、目標や目的に向かって進めます。計画通りに進めることで、計画の適切さや効率性を確認することができます。
記録やデータを残す
実行した内容や結果を記録やデータとして残します。記録やデータを残すことで、後の評価や改善に役立てることができます。
計画と現実のギャップを把握し、柔軟に対応する
実行中に問題や変化があった場合は、柔軟に対応します。計画とのギャップに柔軟に対応することで、状況に応じた最適な解決策を見つけることができます。
Check:評価する
「Check:評価する」は、PDCAサイクルの3番目のステップであり、実行した結果を、目標や目的と照らし合わせて評価する段階です。評価することで、成功した点や失敗した点、原因や理由などを明らかにすることができます。評価する際には、以下のようなことを行います。
客観的なデータや事実に基づく(客観性の確認)
評価は、主観的な感想や印象ではなく、客観的なデータや事実に基づいて行います。データや事実は、実行の際に記録やデータとして残したものを用います。データや事実に基づくことで、正確かつ公平な評価ができます。
数値的な指標を用いる(定量的な確認)
評価は、数値的な指標を用いて行います。数値的な指標は、計画の際に設定したものを用います。数値的な指標には、KPI(Key Performance Indicator)やOKR(Objectives and Key Results)などがあります。数値的な指標を用いることで、定量的かつ具体的な評価ができます。
成功した点や失敗した点を特定する(成果確認)
評価は、成功した点や失敗した点を特定します。成功した点や失敗した点は、目標や目的との達成度やギャップによって判断します。成功した点や失敗した点を特定することで、強みや弱みを把握することができます。
原因や理由を分析する(計画の妥当性の確認)
評価は、成功した点や失敗した点の原因や理由を分析します。原因や理由は、実行中に起きた問題や変化、仮説やアイデアの妥当性などによって探ります。原因や理由を分析することで、問題解決や改善策のヒントを得ることができます。
Action:改善する
「Action:改善する」は、PDCAサイクルの最後のステップであり、評価した内容をもとに、次の計画や実行に反映させる段階です。改善することで、問題点の解決や改善策の提案、新たな目標や目的の設定などを行うことができます。改善する際には、以下のようなことを行います。
問題点の解決を行う
評価で特定した問題点を解決するために、必要な対策や修正を行います。問題点の解決は、原因や理由に対応したものにします。例えば、「SNSでキャンペーンを実施したが、反応が低かった」という問題点に対して、「SNSの選択が適切でなかった」「キャンペーンの内容が魅力的でなかった」「キャンペーンの期間が短かった」などの原因や理由を分析し、「別のSNSを使う」「キャンペーンの内容を変更する」「キャンペーンの期間を延ばす」などの対策や修正を行います。
改善策の提案を行う
評価で明らかになった改善点や新しいアイデアを提案します。改善策の提案は、目標や目的に沿ったものにします。例えば、「ポイントカード制度を導入したが、リピート率が目標に達しなかった」という評価に対して、「ポイントカード制度を見直す」「他の顧客満足度向上策を考える」などの改善策を提案します。
新たな目標や目的を設定する
評価で得られた成果や学びから、新たな目標や目的を設定します。新たな目標や目的は、現状や課題に応じて適切なものにします。例えば、「売上を10%増加させる」という目標を達成した場合は、「売上をさらに20%増加させる」という新たな目標を設定したり、「売上だけでなく利益率も高める」という新たな目的を設定したりします。改善による目標の達成への乖離が大きい場合は、計画そのものの中止や延期の判断も行う必要があります。
PDCAサイクルを十分に活用するには、あらかじめそのメリットについて知っておく必要があります。PDCAを活用することで得られる3つのメリットを紹介します。
業務改善につながるから
タスクが明確になるから
成長スピードが上がるから
ひとつずつみていきましょう。
業務改善につながるから
PDCAサイクルでは、計画を立てる際に目標や課題を明確に設定します。ここから、現状とのギャップや改善すべきポイントが見えるようになります。また、評価を行う際にも、目標と実績を比較し、問題点や原因を分析します。これにより、効果的な改善策を考えることができます。
業務改善につながるメリットは、業務の効果や効率を向上させることです。業務改善により、無駄やミスが減り、時間やコストが削減されます。また、業務改善により、お客様や社内外のステークホルダーからの満足度も高まります。
さらに、PDCAサイクルでは、改善を行った後にも再び計画や実行や評価を行います。その結果、サイクルが早ければ早いほど業務の改善速度が上がることも期待できます。
タスクが明確になるから
PDCAサイクルでは、計画を立てる際に必要なリソースやスケジュールを見積もります。これにより、作業時間や期限を予め決めることができます。また、実行や評価を行う際にも記録や報告をします。これにより、作業内容や進捗状況を把握することができます。
タスクが明確になるメリットは、作業の優先順位やバランスを調整しやすくなることです。作業時間や期限が決まっていれば、自分のタスク管理がしやすくなります。また、作業内容や進捗状況が分かっていれば、他の人と連携しやすくなります。
また、目標が曖昧だと自分のやるべきことがわからないこともあります。しかし、PDCAサイクルでは具体的な計画立案により自分がすべきことがはっきりします。そのため、作業の方向性や意義が明確になります。
成長スピードが上がるから
PDCAサイクルでは、改善を行う際に前回の計画や実行、評価の結果を参考にします。このサイクルで、前回の失敗や成功の経験を活かして、より効果的な改善策を考えることができます。また、改善を行った後にも再び計画や実行、評価を行います。これにより、継続的に自分やチーム、会社の仕事を見直すことができます。
成長スピードが上がるメリットは自分だけでなく、会社やプロジェクト全体のスキル、知識、能力を高めることです。PDCAサイクルにより自分の仕事に対する理解、分析力、判断力、実行力などが向上します。また、PDCAサイクルにより会社やプロジェクトがどこへ向かうのか、どう展開するのかが見える化できます。この点で、自分の仕事のビジョンや戦略も明確になります。
さらに、PDCAサイクルでは改善の効果や効率を測定し報告、共有します。これにより会社やプロジェクトの成果や問題点や改善点などが全体で共有されます。その結果、会社やプロジェクト全体の学習やフィードバックが促進されます。
ここではPCDAサイクルを回す3つの具体例をご紹介します。
・例1.仕事のPDCAサイクル(営業マンの場合)
・例2.プロジェクトのPDCAサイクル
・例3.企業のPDCAサイクル
例1.仕事のPDCAサイクル(営業マンの場合)
PDCAサイクルのPlan段階で新規開拓営業マンが以下の課題に対処するための具体的な例をご紹介します。
Plan:計画を立てる
①期限と目標の定量化
「1か月当たりの新規受注を30件にしたい」と目標を定量化
②現状(スタート地点)とどれくらいギャップがあるか
過去1ヶ月の商談は20件だったため、10件のギャップがある。
③ギャップの発生理由
「アポのスケジューリングの効率が悪い」
「落ち着きがない」
「説明が論理的でない」
「顧客からしっかりヒアリングできていないため顧客インサイトが把握できていない」
「アポの絶対数が少ない」
「自社商品の知識が不足している」
「情報収集が習慣化できていない」
「商談で早口になってしまう」
④優先的に解決すべきものは何か
「説明が論理的でない」
「アポのスケジューリングの効率が悪い」
⑤課題を達成度がわかるようにKPI化
「商談の件数を1日2件→3件にする」
「商談受注率50%→60%」
⑥解決策(仮説)を考える
「業務の無駄を洗い出す」
「営業支援システムを導入する」
「事務的な作業時間を減らすスキル・方法を身に着ける」
「論理的な話し方の本を読む」
「上司や同僚にロールプレイングを行い点数をつけてもらう」
Do:実行する
①解決案をどう実行するかを明確にする
「上司に協力を仰ぐ」
「毎日ロールプレイングを行い点数をつけてもらう」
「顧客に対する論理的でわかりやすい話し方の参考となる本を読む」
「Excelの基本的なマクロや効率的な関数などを身に着け入力業務時間を減らす」
②行動に優先順位をつける
「本を探すなどすぐに行えるものは優先的に行動する」
③達成率を具体的設定する
「ロールプレイングの点数80点以上」
「Excel入力作業の時間を30分以内にする」
④直近の行動を手順に分解してスケジュールに入れる
「明日の午前中に上司に協力を仰ぐ」
「参考となる本を1章読むごとに翌日のロールプレイング、翌々日以降の商談で実践する」
「1日1つは目的に沿ったマクロを組む」
Check:評価する
①目標の達成率をチェックする
新規企業の広告掲載、達成率50%
②計画の達成率を調べる
アポの件数を1日2件にする→達成率60%
商談受注率60%→達成率60%
③DOの達成率を調べる
商談練習の点数80点以上→ 70%
Excelの入力作業の時間を30分以内にする→80%
顧客に対する論理的でわかりやすい話し方の参考となる本を読む→読んだが未実践
④できなかった理由を確認する
ロールプレイングで80点以上取れなかった理由→想定外の質問に答えられなかった。
本で読んだことを実践できなかった理由→商談の中で実践するタイミングが掴めなかった。失敗が怖かった。
Action:改善する
①評価の結果を参考に、改善のための方策を立てる
想定外の質問に答えられなかった→論理的な話し方に加えてコミュニケーションについて学ぶ
商談の中で実践するタイミングが掴めなかった→ロールプレイングをさらに実践的に複数相手に行う
②改善案に優先順位をつけまた実行、評価、改善を繰り返す
「Do:実行する」→「Check:評価する」→「Action:改善する」を繰り返す
例2.プロジェクトのPDCAサイクル(食品メーカーの場合)
ここでは食品メーカーで「今までの自社製品にはない、今の消費者のニーズに合致した新商品を開発しなさい」という業務命令が出たと仮定します。
早速その企画の為のプロジェクトチームが組まれました。
Plan:プロジェクトの計画策定
まずプロジェクトのリーダーを決めます。リーダーを中心に以下の議論を行いました。
「今までの自社にはない製品とは何か」
「消費者のニーズは何か?ニーズを明確にする指標は何か?」
「商品開発に必要なものは何か」
「メンバーの担当と役割は何か」
といった内容を、漏れがないようにそれぞれ目標を設定しました。
Do:プロジェクトの進行
計画の段階で分担や業務フローは明確にしていたため、フローの中での業務受け渡しもスムーズに行われていました。しかし、本業と並行して行われたプロジェクトのため担当者によってはなかなかプロジェクトが進まない、という問題が発生します。そのため、リーダーはメンバーを集め「プロジェクトの目的」を改めて話し合いました。そこでプロジェクトが進まない理由として「本業を優先してしまっている」という問題が浮かび上がってきました。そこでリーダーはその話し合いをこのプロジェクトの重要性についてお互いに確認しあう場としました。
Check:プロジェクトの進捗チェック
プロジェクトの進捗度合いを毎月チェックしています。
タスクごとに点数を付け、集計結果から遅れているタスクを特定できるようになっています。
担当者が自分の担当の遅れを把握し、奮起する仕組みです。
Action:プロジェクトの課題の改善
新商品に使う予定の原料を製造するメーカーに、必要となる生産量を確保できるラインがないという問題が発覚しました。ここで改めてチームは集まり解決策を探しました。「他の原料に変更すべきだ」「新商品では原料を変えるとコンセプトも変わってしまうので、ライン増設をお願いすべきだ」といった意見を出し合いました。そこでリーダーによる「このプロジェクトでどんな商品を開発したかったのか?」という問いかけにより、メンバーの意識はプロジェクトの原点に立ち返りました。この議論では「コンセプトを維持したまま原料も製法も1から見直そう」といった方向になりました。
あらかじめ余裕をもったスケジュールで計画を立てていたため、当初の計画より時間はかかってしまい期限ぎりぎりではありましたが、「今までの自社製品にはない、今の消費者のニーズに合致した新商品を開発する」という目的に合致した満足のいく提案ができました。
このように ポイントポイントでPDCAサイクルをきちっと回せたかどうかがプロジェクトの成功のカギを握っていることがわかります。
例3.企業のPDCAサイクル(株式会社良品計画の場合)
株式会社良品計画は、無印良品(MUJI)やMUJIブランドの小売店舗・商品開発と製造・販売を展開する専門小売企業です。無印良品は、住宅、家具、衣料品、雑貨、食品などの販売店を国内外に出店しており、オンラインストアやホテルも手掛けています。 1979年に設立された無印良品は「ノーブランドというブランド」として出発しました。そのコンセプトは、価格を抑えて消費者に喜ばれる商品を提供することでした。現在も無印良品は日本国内外で多くの支持を受けています。
良品計画は、競合などの勢いに押され、売上と利益が減少していました。
こうした業績不振に陥った中、2001年に社長に就任したのが「松井 忠三(まつい ただみつ)」氏です。
業績回復のために、良品計画はPDCAサイクルを導入するとともに、社内提案書のルールを策定しました。そのルールとは、「会議に出す社内提案書はA4の用紙1枚に収まる量で作ること」というものです。5W1Hと費用対効果だけを記し、あとは口頭で説明することを徹底しました。
社内提案書のシンプル化
計画:「会議に出す社内提案書はA4の用紙1枚に収まる量で作ること」というルールを策定
行動:社内の会議で徹底
評価:会議の効率化とスピードアップ、課題と解決策の明確化
改善:紙の使用量を削減することで環境への負荷を軽減
このルールによって、業績が上がった理由は以下のとおりです。
提案書作成の負担が軽減され、提案のハードルが下がった
従来の提案書は、10ページ以上にも及ぶものが多く、作成に膨大な時間と労力がかかっていました。そのため、提案書を作成するハードルが高く、社員から提案がなかなか上がってきませんでした。
A4用紙1枚の提案書にすることで、提案書作成の負担が軽減され、提案のハードルが下がりました。これにより、社員から多くの提案が上がるようになり、新たな改善策をスピーディーに実施できるようになったのです。
提案の目的や重点が明確になり、判断がしやすくなった
従来の提案書は内容が複雑で提案の目的や重点がわかりにくかったことがあります。そのため、会議で提案を検討する際に判断が難しかったのです。
提案の質が高まった
A4用紙1枚に収めるためには提案内容を精査し、本当に必要な情報だけをまとめる必要があります。そのため、提案の質が高まりました。
松井氏はこうした社内の状況を分析し、「行動力が弱い原因は長いばかりでメリットがない資料」に原因があると考えました。
ここから「紙の量と実行力は反比例する」という仮説が生まれました。
共通マニュアルを増やした
「無印良品」ブランドを展開する際に、PDCAサイクルを活用して店舗の業績改善を実現した成功例もあります。特に「MUJIGRAM」という店舗向けの業務基準書の改善による成果が顕著です。「MUJIGRAM」は無印良品の店舗に関するあらゆる業務のやり方を詳細に記載したマニュアルです。
計画:社員の業務フローを標準化し、情報共有を強化することを計画。
実行:2010年から2015年の間に、共通マニュアルを約100本作成。マニュアルの作成にあたっては、現場の従業員からの意見を積極的に反映。
評価:共通マニュアルの作成後、店舗の従業員を対象にアンケート調査を実施しました。その結果、共通マニュアルにより業務の理解度が向上し、実行力が強化されたことが明確に。
改善:アンケート調査の結果を踏まえ、マニュアルの内容を継続的に改善。
良品計画では当時、店舗ごとに独自の業務フローが存在し情報共有が十分に行われていなかったため、実行力が弱く業績不振に陥っていました。
そこで、共通マニュアルを増やすことで業務フローを標準化し情報共有を強化することを計画しました。
その結果すべての国内外の店舗で共通した高水準のサービス提供が可能になったのです。
マニュアルを定期的に更新する仕組みづくり
良品計画のマニュアルは、社員の提案や日々の業務から感じていること(評価)が、マニュアルに反映される(改善)仕組みを取っています。
良品計画では「業務基準書は3カ月に1回、店舗用マニュアルは月に1回更新」そして、店舗用マニュアルは「1度に全体の1%を更新する」というルールを設定しました。
良品計画では、マニュアルの内容を継続的に改善するために、以下の取り組みを行っています。
顧客視点シート
店舗スタッフが、顧客からの声や店舗で困っていることなどを本部に伝える仕組みです。この仕組みを通じて、現場の従業員が抱えている課題や改善点を把握し、マニュアルの内容に反映しています。
改善提案
店舗スタッフがマニュアルの改善点を提案できる仕組みです。この仕組みを通じて、現場の従業員からの意見を積極的に反映しています。
定期的なレビュー
マニュアルの作成担当者が定期的にマニュアルの内容をレビューし、必要に応じて更新しています。レビューの際には、以下の項目をチェックしています。
・マニュアルの内容が実際の業務に沿っているか
・マニュアルがわかりやすいか
・マニュアルに誤りがないか
このように現場も含めた社員一人一人が当事者意識をもって改善提案を行う事で、PDCAの「改善」がうまく機能し、継続的にサイクルが回る仕組みを作っています。
このように良品計画ではPDCAを上手く回した結果、その期間6年間に売上1.5倍、利益72億円にまで回復しました。
ここでは、どういう時にPDCAサイクルが失敗するのか、ケースごとにご紹介します。
バランスが悪いケース
PDCAサイクルは、ビジネスの改善において欠かせないフレームワークです。しかし、PDCAサイクルのバランスが崩れてしまうと、思うように改善が進まないことがあります。
ある個人事業主の例です。とにかく行動をすることが大事だと考え、PDCAサイクルの「Do」にばかり注力していました。そのため、目標や目的を明確に定めずに行動したり、効果検証を怠ったりして、なかなか改善が進んでいませんでした。そのうえ、効率の悪いやり方で行動をし続けてしまい、結果的に時間やコストがかかってしまうことも問題でした。
このようにPDCAサイクルをうまく回すためには、各プロセスのバランスをしっかりと取ることが大切です。
PDCAサイクルのバランスをとるためのポイント
PDCAサイクルのバランスをとるためのポイントは、以下のとおりです。
Plan(計画)をしっかりと立てる
目標や目的を明確に定め、実現するための計画をしっかりと立てることが大切です。計画がなければ、行動の方向性がブレてしまい、改善が進みません。
Do(実行)とCheck(評価)をバランスよく行う
計画を実行するだけでなく、実行した結果をしっかりと評価することも大切です。評価をすることで、改善がうまく進んでいるかどうかを判断することができます。
Act(改善)を忘れずに行う
評価の結果、改善が必要であれば、すぐに行動を起こしましょう。改善を忘れてしまうと、せっかくの努力が水の泡になってしまいます。
こだわりすぎるケース
PDCAサイクルを回す際に、Plan(計画)にこだわり過ぎると、改善スピードが大幅に落ちてしまうことがあります。
ある企業の例です。この企業は、新商品の開発にあたり、PDCAサイクルを回すことにしました。しかし、Plan(計画)の段階で、商品のターゲット層や価格、販売方法など、あらゆる可能性を検討し、完璧な計画を立てようとしました。その結果、なかなかDo(実行)のフェーズに移行することができず、改善スピードが大幅に落ちてしまいました。
Plan(計画)は、PDCAサイクルの重要なプロセスです。しかし、Plan(計画)にこだわり過ぎると、以下の問題が発生することがあります。
実行が遅れる
Plan(計画)の段階で、あらゆる可能性を検討しようとすると、時間がかかってしまいます。そのため、Do(実行)のフェーズに移行するのが遅くなり、改善スピードが落ちてしまいます。
現実とのギャップが生まれる
Plan(計画)は、あくまでも理想的な状態です。そのため、現実の状況とギャップが生じてしまうことがあります。その結果、Do(実行)の段階で、計画通りに進まないことが多くなります。
改善の機会を逃す
Plan(計画)の段階で、あまりにも完璧なものを求めてしまうと、改善の機会を逃してしまうことがあります。
PDCAサイクルを回す際には、Plan(計画)にこだわり過ぎないように注意しましょう。Plan(計画)はあくまでも、Do(実行)の段階で検証するためのものです。Plan(計画)は、現実的な範囲で立て、Do(実行)の段階で改善を重ねていくことが大切です。
PDCAサイクルをうまく回すためのポイント
PDCAサイクルをうまく回すためには、以下のポイントを押さえることが大切です。
Plan(計画)は、現実的な範囲で立てる
Plan(計画)は、現実的な範囲で立てることが大切です。
Do(実行)の段階で、Plan(計画)を検証する
検証の結果、Plan(計画)を修正する必要がある場合は、すぐに修正しましょう。
Plan(計画)とDo(実行)をバランスよく行う
Plan(計画)にこだわり過ぎず、Do(実行)の段階で改善を重ねていきましょう。
PDCAサイクルに失敗するよくある3つの理由をご紹介します。
Planが現実的でない
Planに時間をかけすぎている
Check・Actionをしていない
Planが現実的でない
PDCAでPlanが現実的でない願望で計画を立てると、以下の問題が生じます。
目標が達成できない
願望で計画を立てると、目標が現実離れしたものになってしまうことがあります。そのため、目標を達成することができず、Planが失敗に終わってしまうのです。
例えば、「売上を10倍にする」という目標を掲げたとします。しかし、現状の売上が1億円であれば、10倍の売上を達成するためには、10億円の売上が必要になります。これは、現実的に達成が難しい目標と言えるでしょう。
計画が曖昧になる
願望で計画を立てると、具体的な方法や手段が定まらず、曖昧な計画になってしまうことがあります。そのため、実行するときに迷ってしまい、計画通りに進まない可能性があります。
例えば、「営業力を強化する」という目標を掲げたとします。しかし、具体的にどのような方法で営業力を強化するのか、何をもって営業力の強化とするのかが定まっていないと、計画通りに実行することは難しいでしょう。
改善につながらない
Planが失敗に終わっても、願望で計画を立てていたため、その原因を分析することができず、改善につながりません。そのため、同じ失敗を繰り返すことになります。
例えば、「新商品を発売する」という計画を立てたとします。しかし、新商品が売れず、計画が失敗に終わってしまったとします。願望で計画を立てていた場合、その原因を分析することができず、新商品の開発やマーケティング方法を改善することができないでしょう。
PDCAは、Planがうまく立てられなければ、うまく機能しません。Planを現実的なものにするためには、現状分析を行い、目標を段階的に分解し、実現可能性を検討し、関係者との調整を行うなどの点に注意して計画を立てましょう。
Planに時間をかけすぎている
PDCAのPlanに時間をかけすぎていると、以下の問題が生じます。
実行が遅れる
Planに時間をかけすぎると、実行が遅れてしまうことがあります。PDCAは、Plan・Do・Check・Actionの4つのステップを繰り返すことで、業務改善や問題解決を図るフレームワークです。Planに時間をかけすぎると、Do・Check・Actionの時間が少なくなってしまいます。そのため、目標を達成するまでに時間がかかってしまいます。
目標が現実離れしたものになってしまう
Planに時間をかけすぎると、目標が現実離れしたものになってしまう可能性があります。そのため、目標を達成することが難しくなります。
改善につながらない
Planに時間をかけすぎると、改善につながらないことがあります。PDCAは、Plan・Do・Check・Actionを繰り返すことで、業務改善や問題解決を図るフレームワークです。Planに時間をかけすぎると、Do・Check・Actionの機会が少なくなってしまいます。そのため、問題点や改善点が見えにくくなり、改善につながりづらくなってしまいます。
PDCAを効果的に回すためには、Planに適切な時間をかけることが大切です。Planに時間をかけすぎると、上記のような問題が生じてしまいます。Planにかける時間は、目標の難易度や複雑さによっても変わってきます。一般的にPlanにかける時間は、全体の30~50%程度が適切と言われています。
Planにかける時間を短縮するためには、以下の点に注意しましょう。
現状分析を簡潔に行う
現状分析は、Planを立てるために重要なステップです。しかし、現状分析に時間をかけすぎると、Planにかける時間が長くなってしまいます。現状分析は、簡潔に行うようにしましょう。
目標を段階的に分解する
大きな目標を達成するためには、それを小さな目標に分解する必要があります。目標を段階的に分解することで、Planを立てやすくなり、Planにかける時間も短縮することができます。
実現可能性を検討する
目標を達成するために必要な方法や手段が、現実的に実行可能かどうかを検討します。実現可能性を検討することで、Planを現実的なものにすることができます。
関係者との調整を行う
Planは、一人で立てるものではありません。関係者との調整を行い、全員が納得できるPlanを立てましょう。
Check・Actionをしていない
PDCAにおいて、Check・Actionをしていないと、以下の問題が生じます。
目標が達成できない
Check・Actionをしていないと、目標が達成できないことがあります。PDCAは、Planで立てた目標をDo・Check・Actionで達成していきます。Check・Actionをしていないと、目標が達成できているか、改善が必要かどうかがわかりません。そのため、目標を達成することが難しくなります。
改善につながらない
Check・Actionをしていないと、改善につながらないことがあります。PDCAは、Plan・Do・Check・Actionを繰り返すことで、業務改善や問題解決を図るフレームワークです。Check・Actionをしていないと、問題点や改善点が見えにくくなり、改善につながりづらくなってしまいます。
無駄な努力をする
Check・Actionをしていないと、無駄な努力をすることがあります。Doで実行した内容が、目標の達成につながっていない場合でも、気づかずに同じことを繰り返す可能性があります。そのため、無駄な努力をしてしまうことになります。
PDCAを効果的に回すためには、Check・Actionをきちんと行うことが大切です。Check・Actionをきちんと行うことで、以下のメリットがあります。
・目標の達成率が向上する
・改善につながりやすくなる
・無駄な努力を減らすことができる
上記の例のような失敗をしない為にはPDCAサイクルをどう回ししたらいいでしょうか? ここではそのための4つのコツをご紹介します。
・現実的で緻密な計画を立てる
・複数人で分析する
・定期的に進捗を確認する
・「なぜ」を繰り返して原因を追求する
1. 現実的で緻密な計画を立てる
PDCAサイクルの第一歩は、Plan(計画)です。目標を達成するためには、現実的で緻密な計画を立てることが大切です。
目標は、達成できそうにないとやる気が出ません。そのため、頑張れば達成できそうな、具体的な目標を設定しましょう。また、目標を達成するために必要なステップを、具体的に計画します。
計画を立てる際には、以下の点に注意しましょう。
目標を明確に定める
目標を達成するために必要なステップを具体的に計画する
実行可能な計画にする
2. 複数人で分析する
Planを立てる際には、複数人で分析することが大切です。一人で分析すると、どうしても主観的な視点になりがちです。複数人で分析することで、客観的な視点を得ることができます。
分析には、以下の方法が有効です。
・ブレインストーミング
・SWOT分析
・5W2H
3. 定期的に進捗を確認する
Do(実行)の段階では、定期的に進捗を確認することが大切です。計画通りに進んでいるのか、問題点はないかを確認しましょう。
進捗を確認する際には、以下の点に注意しましょう。
計画との差分を把握する
問題点があれば、原因を分析する
4. 「なぜ」を繰り返して原因を追求する
Check(評価)の段階では、「なぜ」を繰り返して原因を追求することが大切です。目標を達成できなかった場合、その原因を分析することで、改善策を導き出すことができます。
「なぜ」を繰り返して原因を追求する際には、以下の点に注意しましょう。
・表面的な原因にとどまらない
・根本的な原因を追求する
「なぜ」を繰り返して原因を追求するコツを、以下の具体例で紹介します。
ある企業で、新商品の販売促進キャンペーンを実施したところ、目標の売上を達成することができませんでした。
この場合、まずは表面的な原因として、「キャンペーンの認知度が低かった」「キャンペーンの内容が魅力的でなかった」などの可能性を検討します。
そして、これらの可能性をさらに深掘りするために、「なぜ認知度が低かったのか」「なぜキャンペーンの内容が魅力的でなかったのかを、それぞれ「なぜ」を繰り返して原因を追求します。
その結果、以下のことが判明したとします。
・認知度が低かった理由は、キャンペーンの告知が十分に行われなかったこと
・キャンペーンの内容が魅力的でなかった理由は、ターゲット層を十分に理解していなかったこと
これらの原因を踏まえて、改善策を検討します。
・キャンペーンの告知をより効果的に行う
・ターゲット層をより深く理解した上で、キャンペーンの内容を検討する
これらの改善策を実行することで、次回実施するキャンペーンでは目標の売上を達成できる可能性が高まります。
PDCAサイクルについてよくある質問をまとめました。
PDCAサイクルの身近な例は?
日常生活で身近なPDCAサイクルの例をご紹介します。
【勉強】
目的:試験で高得点を取る
計画:試験範囲を把握し、勉強スケジュールを立てる
実行:計画に沿って勉強する
確認:定期的にテストや模擬試験を受け、理解度を確認する
改善:テストや模擬試験の結果を分析し、改善点があれば計画に反映する
【家事】
目的:家事を効率的に行う
計画:家事の優先順位を決め、スケジュールを立てる
実行:計画に沿って家事をこなす
確認:定期的に家事の時間を測定し、目標達成に向けて進捗を確認する
改善:家事の時間短縮につながる工夫を探す
【趣味】
目的:ギターを上達させる
計画:練習する曲など、練習メニューを立てる
実行:練習メニューを実行する
確認:定期的に自分の演奏を録音し、上達具合を確認する
改善:上達が悪い部分を重点的に練習する
PDCAサイクルはどんな時に使うのか?
目標達成や改善が必要な多くの場面で活用できます。
PDCAサイクルは、目標を達成するために計画を立て、実行、評価し、改善を繰り返すプロセスです。そのため、目標達成や改善が必要な場面で活用できます。
具体的には以下の場面で活用できます。
ビジネス
新商品やサービスの開発・業務改善・営業活動・マーケティング
勉強
試験勉強・資格取得・スキルアップ
日常生活
ダイエット・家事・趣味
PDCAサイクルは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)のサイクルを回す、目標達成のためのプロセスです。ビジネスシーンや日常生活において幅広い場面で活用できる有効な手法です。
PDCAサイクルを効率的に回すためのポイントをしっかり押さえ、成功例と失敗例を参考にPDCAサイクルを活用して目標達成を目指しましょう。
弊社、株式会社アイデアプラスはお客様が抱える課題を考えクリエイティブの力で課題解決、一緒に目標達成まで伴走致します。
お困りの方は、ぜひ株式会社アイデアプラスにお気軽にご相談ください。